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J1 2026.10.21 11:00

「慢心ではないけど、緩さみたいなものは感じる」ファジアーノ岡山、3連勝から3連敗。攻撃を牽引する江坂任が抱く危機感【コラム】

シリーズ:コラム text by 難波拓未 フリーライター photo by Getty Images

ファジアーノ岡山 江坂任

ファジアーノ岡山の江坂任【写真:Getty Images】



 ファジアーノ岡山は10月18日の明治安田J1リーグ第10節・ヴィッセル神戸戦に0-3で敗れ、リーグ戦3連敗となった。前半に好機をつくりながら決め切れず、後半のミスから失点を重ねた一戦。神戸とのクオリティの差を認めつつ、チームに漂う緩さにも警鐘を鳴らしたのが、攻撃をけん引する江坂任だ。J1でさらに上を目指すために、岡山はいま何を見つめ直すべきなのか。(取材・文:難波拓未)[1/2ページ] 

【2026/27明治安田J1リーグ第10節】
2026年10月18日 ファジアーノ岡山 0-3 ヴィッセル神戸
(JFE晴れの国スタジアム)

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攻撃のタクトを振っていた江坂任が悔やんだ場面

26年10月18日 ファジアーノ岡山×ヴィッセル神戸より 岡山のイレブンショット

ゲームキャプテンとしてヴィッセル神戸戦に先発したファジアーノ岡山の江坂任(下段一番左)【写真:Getty Images】


「やっぱり(相手は)クオリティが高いなと。ゴール前のクオリティというか。ミスを逃してくれないクオリティがあった。あとは、GKのクオリティが高くて、なかなかゴールにはならなかった」

 川崎製鉄サッカー部をルーツに持つヴィッセル神戸とファジアーノ岡山が対戦したJ1リーグ第10節を、岡山の江坂任はそう振り返った。

 今節は「川鉄ダービー」の呼称が正式化されてから最初の試合であり、14,874人のサポーターがJFE晴れの国スタジアムに駆けつけた。川鉄サッカー部を源流に、1995年から活動を開始した神戸と、2003年に誕生した岡山。「世界一ハートフルな兄弟喧嘩」というサブタイトルがつけられた一戦は、ホームの岡山が0-3で敗れ、“弟”が“兄”に威厳を示される結果となった。

 前半はキックオフ直後から息つく暇もないほど激しい攻防が展開されるなか、岡山が勢いよく神戸に立ち向かった。

 最前線で先発したルカオを起点に、速攻を仕掛ける。レナート・モーザーはボールをキャッチした後、チーム全体の押し上げを待つことなく、球足の長いパントキックを何度も蹴り込んだ。

「相手コートでプレーする」というスタイルを表現しつつ、3バックの岡山は4バックの神戸に対してシステムのズレも活用。両サイドのウイングバックが幅を取り、左右を広く使うことで、押し込む場面をつくっていった。その攻撃のタクトを振っていたのは、指揮官から「コンディションが上がってきた」と言われる江坂だった。

 15分には、好機にスタジアムがどよめく。右サイドから左サイドに展開し、ボックス内の左でオベルダンが相手2選手を引きつけて後ろに下げる。これを受けた江坂が右足を振り抜く。
 
 地を這うようなミドルシュートが枠を捉えたが、神戸のGK権田修一の横っ飛びに阻まれた。「(ミートの感覚は)悪くなかったと思うけど、もう少し良いコースに飛んでくれれば」と悔やんだ。

 その後も岡山はチャンスを生み出し、前半に7本のシュートを放った。その一方で、神戸が放ってきた9本のシュートを防ぎ、スコアレスで折り返した。

木山隆之監督がヴィッセル神戸との間に感じた差

ファジアーノ岡山 木山隆之監督

ファジアーノ岡山の木山隆之監督【写真:Getty Images】


 ハーフタイムにルカオからレオ・ガウショに代えてスタートした後半は、開始早々の48分に超がつくほどの決定機を迎えた。

 白井康介が相手陣内でのパスカットから即座にクロスを送り、ガウショが合わせる。そして、江坂も詰めていた。しかし、相手DFの身体を張ったシュートブロックと、元日本代表GKの決死のセービングに阻止された。

 すると、その1分後に先制点を喫する。神戸にスローインからボックス内への進入を許し、大迫勇也にネットを揺らされた。

 さらに10分も経たないうちに追加点を献上。チャンスを仕留めきれなかった後、自陣での飛距離不十分のクリアや目の前の相手に引っ掛かる縦パスといったミスを、神戸は見逃してはくれなかった。この連続2失点が大きく響いた。

 64分にもロングスローの混戦から3失点目。声援を受けた選手たちは最後まであきらめずに戦ったが、勝利を手繰り寄せるには難しい状況となってしまった。

 神戸を率いるミヒャエル・スキッベ監督は試合後の会見で、「3-0というスコアほどすごい差があったとは感じていない」と言及したが、岡山を率いる木山隆之監督の目には違うように映っていたという。

「勝利したスキッベ監督の言葉だけに満足してはいけない」と口にし、「テクニカルエリアで見ている自分からすると、ちょっとしたディテールの違いが0-3になる。大きな質の差があることをちゃんと認識しなければならない」と語気を強めた。

 その差は何なのか。失点シーンで言えば、3つとも守備陣形を大きく崩されたわけではなかった。数的不利を強いられたわけでもなかった。木山監督はこう表現する。

「ヴィッセルの選手は苦しい状況のときにクリアボールを確実に大きくスペースに流し込んできたりしていた。我々は、やれているときもあるけど、クリアが短くなったり、2点目も中途半端なパスかクリアかわからないボールが相手に渡って、そこからサイドを崩されてしまった。それは小さいように見えて大きな差で、そこを何とかしていく必要性がある。

 でも、こうした差は相手のレベルが高くないと見えないこと。非常に高いレベルの相手と戦って、自分たちがそれをしっかり学ぶというか、まだまだ足りていない部分、身につけていくべきことの必要性を、ゲームを通じて知らされているというふうに認識しています」

 とはいえ、勝ち目が全くない試合ではなかった。結果的には神戸に後半に刺されたが、岡山にも刺すチャンスは特に前半にあった。「前半の出来をより自分たちで研ぎ澄ましていきながら、もう少し頑張らなければならない」という指揮官の受け止めに、ゲームキャプテンの江坂も呼応する。

「今はもったいないゲームが続いている」チームが直面する課題とは

ファジアーノ岡山 江坂任

ヴィッセル神戸ゴールに迫った江坂任だが、元日本代表GK権田修一に阻まれる【写真:Getty Images】


「(後半は)ミスからの失点があった。もちろん、そこはフォーカスしないといけないと思いますけど、前半にフォーカスして、そこで点を取れれば逆に良い内容になっていたんじゃないかなと思う」

 つくったチャンスを仕留められるか。迎えたピンチを耐えられるか。J1連覇の経験がある神戸との対戦で感じた両ゴール前でのクオリティの差。それは勝敗に直結する部分であり、一朝一夕に解決できるほど簡単なものではない。

 そして、それは今節に初めて見えたものではなく、神戸という強敵を相手にして改めて見えたものでもある。これまでも向上を目指してきたが、取り組み続けるしかない。

 今季の岡山は、リーグ戦と並行して行われるカップ戦も全力で勝ちに行っている。その結果、天皇杯ではベスト16に残った。ルヴァンカップは惜しくも3回戦敗退となったが、出場機会の少ない選手も奮闘して120分の熱戦を繰り広げた。それでも、リーグ戦では今節の結果を受けて、3連勝からの3連敗となっている。

 この現状について、江坂は「今はもったいないゲームが続いている」と表現。「慢心ではないけど、緩さみたいなものは感じる」と警鐘を鳴らし、「途中から出る選手がスタメンの選手と同様に、流れを変えるとか引き締めるとか、そういうプレーをできる選手にならないといけないし、全員がそうならないといけない」と要求した。

 2025年に初挑戦のJ1で残留を確定させ、特別大会を経て戦っている今季は10試合で4勝1分け5敗。勝点13で11位につけている。2年目のJ1で悪くないスタートを切っているように見えるが、江坂は全く満足していない。一緒にチームをけん引している立田悠悟と同じく、「昨年よりも強い危機感」を持っているからだ。

「正直、あの時(2025年)は1年目で、全員が危機感を持っていた。だけど、移籍してきた選手もいるなかで、3連勝したことも含めて、『なんか勝てるんじゃないか』みたいな雰囲気は少し感じるんで。そこはもっと徹底してやらないと。本当にそんなレベルではないと思う。そこは締めたい」

 今季のチームは、ロングボール主体の攻撃や縦に速いカウンターに加え、パスワークでの確実性の高い前進や押し込んだ相手を崩してのゴールなど、攻撃面で徐々にできることは増えている。
 
 チームはそれらを昨年から進化させ、J1に定着するための必要な手段と捉えて取り組んでおり、少しずつかもしれないが、成長を感じる場面は見られる。磨き上げた一本の刀(堅守速攻)だけで戦場に出るのではなく、二本目の刀(確実な前進や崩し)を手に取って研ぎ澄ませている。今のチームはまさにそんな途上にあると言える。

 J1の2年目だからといって、驕りがあるわけではない。チームとして強くなるために通らなければならない過程にいるのだが、それは今まで通ったことのない道だからこそ、これまで遭遇してこなかった新たな課題に直面しているのだろう。

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