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ペップのプレミア一年目は失敗。自己哲学への固執で見誤った選手の適性【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

今季からマンチェスター・シティの指揮官に就任したジョゼップ・グアルディオラ監督。バルセロナとバイエルン・ミュンヘンで数々のタイトルを獲得してきた名将だが、現時点ではリーグ4位でチャンピオンズリーグでもラウンド16で敗退するなど就任一年目は“失敗”と言える。特に、ここまで適性を見誤った選手起用は猛省すべきだろう。(文:粕谷秀樹)

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

順応に苦しんだ一年目のグアルディオラ。現有戦力には「満足」と語るが…

グアルディオラ
今季からマンチェスター・シティで指揮を執るジョゼップ・グアルディオラ監督【写真:Getty Images】

「戦力には満足している」

 マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督は、シーズン開幕当初から終始一貫している。内外のメディアが人手不足を指摘し、彼がかつて率いたバルセロナ、バイエルン・ミュンヘンとの比較論を持ち出しても、現有戦力を否定したケースは一度もない。

 一時はヤヤ・トゥレを干していたが、エージェントのディミトリ・セルクがメディアを通じてグアルディオラを口汚く罵ったペナルティであり、2011年から4年連続でアフリカ最優秀選手に輝いた大型MFが体調を整えると、先発に起用している。

 また、ジョー・ハートがトリノにローン移籍した一件も、基本方針に合致しないためだ。つなぎを意識するグアルディオラにとって、ショットストッパーのハートはGKの理想像ではなかった。クラウディオ・ブラーボ、ウィリー・カバジェロが指揮官の期待を裏切り、その結果が優勝戦線からの撤退だったとしても、一軍の将であればみずからの構想に適したタレントを選択するのは当然だ。

 ましてグアルディオラは、選手としてもプレミアリーグを経験していない。バイエルンに支配されるブンデスリーガ、勢力分布図がマドリーの2チームとバルサに偏るラ・リーガに比べると、6チームがチャンピオンズリーグの出場権を争う過酷な戦場では、さしもの名将も就任一年目はアジャストに苦しんだ。

 しかもシティは、歴代の監督が勝者のメンタリティを注入していなかった。別れ方が残酷だったとはいえ、チェルシーの土台はジョゼ・モウリーニョ(現マンチェスター・ユナイテッド監督)によって築かれている。アントニオ・コンテ現監督とグアルディオラでは事情が異なる。

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