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セリエA 10年前

本田圭佑デビュー戦の前に、覚えておきたいミランのチャント

国際タイトルの獲得数は世界一、セリエAスクテッド18回。歴史と伝統を誇る名門ACミランの応援スタイルを紹介する。(初出:『欧州サッカー批評08』)

text by いとうやまね photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

クルヴァから愛を込めて掛け声と応援歌

 イタリアのスタジアムには、『クルヴァ(Curva)』と呼ばれる区画がある。意味は「カーブ(曲線)」なのだが、要はゴール裏のことだ。現在の専用スタジアムのゴール裏は、ゴールラインに平行な、直線的な客席作りになっている。これが一昔前だと、半円形をつぶしたような曲線を描いていた。文字通りクルヴァ(カーブ)なわけだ。イタリアには古いスタジアムが多く、いまだにその形を残しているところが多い。

 クルヴァには、ならず者が集う。席の値段が安く、危険で、興奮度が高い。客は男だけで、品が悪く、酒を飲み、叫び、怒り、喧嘩をして、歌う……。これは古代ローマの競技場で戦車レースが行われた時代から、なんら変わりがない。ACミランのクルヴァは、ホームスタジアムであるサンシーロの南側にある。それで、南を表すスッド(sud)を付けて「クルヴァ・スッド」と呼ばれる。

 クルヴァ・スッドは、掛け声と歌声に溢れている。それは試合前から、すでに始まっている。イタリア語でカポ(capo)と呼ばれるコールリーダーが、少し節の付いた掛け声をトラメガで叫ぶと、それにティフォージ(熱狂的なファン)が呼応する。この掛け声が終わると同時に、今度は歌が始まる。ちなみに、イングランドでいうチャントは、イタリアでは「coro(コロ)」、複数形で「cori(コリ)」という。

 ここでは、クルヴァ・スッドで展開される最も一般的な掛け声と、それに続く歌を紹介しておこう。ティフォージには『フォルツァ・ミラン・ミラン・カンピオーネ』と呼ばれている。歌のメロディーは、ビートルズの『イエローサブマリン』のサビの手前までだ。

「Forza Milan !(Forza Milan !)Milan campione !(Milan campione !)forza Milan il Milan ole..(forza Milan il Milan ole.. )Forza Milan !(Forza Milan !)vinci per noi ! (vinci per noi !)forza Milan la Sud e con te !(forza Milan la Sud e con te !)」

「ale..ale…ale..ale…forza Milan…ale..ale..」

 フォルツァ(Forza)は「頑張れ!」のような意味、カンピオーネ(campione)はそのままチャンピオンだ。オレ(ole)は「行け!」とか「やれ!」といったところである。この三つは、どこのクラブの掛け声や応援歌にも入る定番の単語だ。

「頑張れミラン! ミランはチャンピオン! 頑張れミラン、ミラン行け! 頑張れミラン! 我らのために勝て! 頑張れミラン、クルヴァ・スッドはお前と共にある!」

 日本語訳は、ざっとこんな感じである。たわいもないと言えば、たわいもない。品行方正な類のコリである。

 もちろん、とんでもない掛け声は山ほどある。

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