明治安田J2リーグ第33節が18日に各地で行われ、ジュビロ磐田はホームに徳島ヴォルティスを迎えた。結果は0-4で磐田の惨敗。J1昇格レースを争う相手に痛い敗戦となった。17歳のMF石塚蓮歩がこの日プロ契約を果たし、後半からプレー。試合を変えるには至らなかったが、“ユース代表”として並々ならぬ決意を見せた。(取材・文:河治良幸)
17歳のMF石塚蓮歩が前倒しでプロデビュー!
ジュビロ磐田の17歳MF石塚蓮歩が、プロ選手として新たな一歩を踏み出した。
すでに2種登録としてYBCルヴァンカップ・ファーストラウンドのFC大阪戦でトップデビュー。来シーズンの昇格内定が決まると、ユースの恩師でもある安間貴義監督が、ジョン・ハッチンソン前監督に代わり、トップの監督に就任して最初の試合となったヴァンフォーレ甲府戦で途中投入されて、1-0の勝利に貢献していた。
その石塚が前倒しの形で、昇格を争う徳島ヴォルティスとのホームゲーム当日に、プロ契約したことが発表された。シーズン終盤戦のキーマンの一人として、クラブが期待をかけている証だろう。
しかし、その記念すべき試合は相手エースのルーカス・バルセロスに2得点を奪われるなど、前半に悪夢の4失点。すでに大量リードを奪われた状況で、72分からのプレーとなった。
「ノア(ブラウンノア賢信)くんが1トップで、トクくん(川合徳孟)が前半やっていた役割を担ってほしいと言われて入りました。ライン間で、いつも通りプレーしてほしいと」
そう振り返る石塚は前線のブラウンノアの周りで動きながら、流れによっては前に出てボールを受けるなど、グスタボ・シルバや倍井謙とともに、徳島ゴールを脅かそうとした。
石塚蓮歩が起用される理由
しかし、はっきりと守備を固める徳島の守備を突き崩すことはできず。無念のタイムアップとなった。
「オープンな展開で、ボールを触る回数が少なかった。そこの反省は次につなげたい」と石塚は振り返る。
スコアがどうであれ、意識は常に前を向いていた。
「まずはゴールを決めること。安間さんのサッカーは、最後まで全員で走ることが大事。その先頭に立って、前から走って守備に行こうっていうのは意識していました」と言葉に力を込めるが、結果に繋げることはできなかった。
その石塚をトップチームで起用する理由に関して安間監督はこう答える。
「僕のやり方を理解していることが大きい。前線の追い方や行くタイミングを、トップの選手にも伝えられる。
ユースでも結果を出してきましたし、どんなカテゴリーでも点を取る選手は同じです。180cmを超えて、右足・左足・頭で点が取れる選手は今どき少ない。スピードに慣れれば武器になる」
だが、その評価通りのものを試合で出しきれていないことは誰でもない石塚本人が認識している。
「ユースの中には落ち込んでいる選手もいた」
「契約していただいて、最初の試合が今日で。ヤマハで相手が徳島っていう。すごく良い状況での試合でした。前節の甲府戦はトクくん(川合徳孟)がゴールを決めて勝たせてるのもあって、今日は自分がって思いがあったんですけど…。
なかなかチーム全体で思うような試合展開にならなくて、それを外から観ているのは悔しいというか。自分がピッチに立って、自分の長所をたくさん出そうと思って入るんですけど。今のところ出し切れていない」
試合後、敗戦の悔しさを噛み締めながらスタンドのサポーターの様子を見つめた。
「前半で4失点しても、こういう心が折れたりしてもおかしくない状況で、サポーターも最後まで声を出して応援してくれたことが本当に力になりました。
ただ、ユースとは違って、トップでは厳しい声も聞こえる。お金を払って観に来てくれている人たちに、笑って帰ってもらえる試合をしたい」
その言葉には責任感がにじむ。
ユース時代から安間監督のもとで育った石塚は、指揮官がトップチームに昇格した際、自身も一緒に引き上げられた。
「安間さんがトップの監督になるって知った時に、ユースの中には落ち込んでる選手もいたりとか。安間さんがトップに来て、(自分は)ユース代表の一人として連れてきてもらっているので。そこはユースのみんなに恥じないプレーをしたい」と、アカデミー代表としての覚悟を口にする。
これまでFC東京をはじめ甲府、カターレ富山、FC岐阜などを率いた経験のある安間監督をユースに引き入れるというのは、育成段階からトップカテゴリーの基準を植え付けたいという磐田の戦略によるものだ。
もちろん、来たるU-21リーグの傘下に備えたプランとも見られるが、プレミアリーグU-18昇格に向けて最終コーナーに差し掛かる段階で、トップチームの事情により監督が替わるというのはユースの選手にもショックが大きかったようだ
ユースには泣き出す選手も。だからこそ…
安間監督は「1月から9月にかけて彼らは本当に変わった。だから、監督としては1年間そのチームを見続けたいという思いがありました。ただ、クラブとしてはトップが最優先。(フロントとも)いろいろ話し合ったうえで、『やります』と決めました」と決断の理由を語る。
それをユースの選手たちに伝えると、その場で泣き出す選手も後を絶たなかったという。
その様子を当事者の一人としても見ていた石塚だからこそ、このチャンスに応えなければならないという思いは強い。
もちろん、そうした責任感だけではない。石塚には選手としての野心がある。
磐田で活躍して日の丸を背負うような選手になること。その間近な目標の一人がU-23アジア杯予選で活躍して戻ってきた、1年上の川合であり、ユースの先輩として欧州で挑戦を続ける後藤啓介の存在だ。
「やっぱり身近なところで川合選手、後藤選手、下の学年にも西岡(健斗)選手だったり小枝(朔太郎)選手とアンダーカテゴリーで、日の丸を背負って活躍している選手が多い。
川合選手は去年も一緒にプレーしてるので。そういう選手が日の丸を背負って戦ってるのに、自分は?というのはあるので。ここで活躍すれば、ユースより確実に、協会の方とかも観てくれると思うので。しっかり結果を出したい」
そうした目標を果たすために、石塚には心に決めていることがある。
「絶対トップでも通用する」
目標を口に出して、そこから逃げないということだ。
それは先輩の後藤が示してきたことでもあり、安間監督からの教えでもある。
「大口たたいてるって思われるのが嫌で言わないとかもあると思うんですけど、そこはやっぱり自分の目標だったら、しっかり日本代表に入るという気持ちを持ってやっていかないといけないと思うので。そこからは目を背けないように、しっかり頑張りたい」と石塚は主張する。
「前を向いた時に、ゴールに向かう力、ゴールを奪う力というのは絶対トップでも通用する。自分が代表に入って活躍するというビジョンを持っている中で、そこは絶対負けないようにやっていきたい」という信念を胸に、苦境の磐田を救うゴールを決めることができるか。
将来性の高いタレントだが、まずは残りシーズンに期待したい。
(取材・文:河治良幸)
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