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J1 4か月前

小池龍太は逃げなかった。「誰が楽になるか、誰が嫌がるか」そのプレーが新たな基準に【鹿島アントラーズ優勝コラム】

シリーズ:コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images
鹿島アントラーズDF小池龍太
鹿島アントラーズDF小池龍太【写真:Getty images】



 鹿島アントラーズのリーグ優勝に貢献した選手たちにフォーカスを当て、今季の取材で得た選手や関係者の証言から振り返るコラムを連載中。第5回は、横浜F・マリノスを契約満了になり、鹿島に加入した小池龍太を取り上げる。複数のポジションをこなしながら、新たな常勝軍団の基準を小池は作っていた。(取材・文:加藤健一)[1/2ページ]
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味方を楽にし、相手に嫌がられる

小池龍太
鹿島アントラーズDF小池龍太【写真:編集部】

 Jリーグを代表するクラブから必要とされた誇らしさと、まだ終われないという強い意志。そのふたつを胸に、鹿島アントラーズでの1年目は始まった。

 右サイドハーフとして臨んだ東京ヴェルディとのホーム開幕戦では、小池龍太の真骨頂となるプレーが光る。自分がゴールを決めるのではなく、誰が楽になるか、相手がどこを嫌がるかを見ながら動き続けた。

 プレスの角度ひとつでボール奪取を導き、ポケットへのランがPK獲得につながった。派手なゴールを挙げたのは前線の選手たちだったが、その裏側には、小池の献身が確かにあった。

「キャラクターの強い選手がいる中で、僕は(味方の)誰が楽になるか、相手がどれくらい嫌がるかを見ながらプレーするのが得意なので。そういった部分で(今日の試合では)1人ひとりの特徴を引き出したつもり」

 おそらく、鬼木達監督が理想とする相手を見て判断するサッカーを最も的確に表現している選手の1人が小池だった。相手の矢印の逆を突く攻撃、相手の矢印を折る守備が、少なくとも序盤戦の段階では抜きんでてうまかった印象がある。

 チームは4月の頭からリーグ戦で3連敗。その中にはホーム・京都サンガF.C.戦でのショッキングな逆転負けが含まれていた。序盤戦で訪れた試練。このままずるずると順位を落としてもおかしくない状況だった。

 それでもチームはそこから7連勝を挙げて浮上に成功した。このとき、小池はチームの状況をこう説明していた。

「誰もそこから逃げなかった」

鹿島アントラーズDF小池龍太
鹿島アントラーズDF小池龍太【写真:Getty images】

「誰もそこから逃げなかったし、自分たちが負けたからとか、勝ったからとかで左右されるようなチームじゃない。もちろん勝つことは大事だけど、勝ち方を求めていたり、でも負けることが一番良くないっていうのは認識しながら細かく修正して自分たちへの信頼を、絆を強くしていってる」

 小池は横浜F・マリノスでリーグ優勝を経験している。だからこそこの言葉には重みがあった。

 鹿島は中盤戦でも3連敗を喫しているが、中断明けの柏レイソル戦で見事な逆転勝利を収めて連敗をストップさせている。この勝利が優勝のターニングポイントの1つだったことは言うまでもない。

 この試合における小池の迫力はすさまじかった。

「一発目は厳しく行こう」

 試合開始の最初のプレーで対面する相手ウイングバックに激しく寄せ、そのままスタンドを煽った。サポーターから後押しをもらうだけでなく、自分たちのプレーでスタジアムの温度を上げていく。

「ピッチに立っている1人かもしれないですけど、サポーターから後押しされるだけじゃなくて、選手がああいうプレーをすることでサポーターがついてくるっていういい循環を作りたかった。苦しいときに支えてもらっているんで、ああいうプレーでチームの雰囲気やスタジアムの雰囲気を作れたのはすごく良かった」

「逃げてたら…」一時は現役引退がよぎった

横浜F・マリノスDF小池龍太
横浜F・マリノス時代の小池龍太【写真:Getty images】

 50分には、相手選手との接触で左脚を痛めたが、痛みをこらえながらプレーを続ける。「ああいうところで逃げてたら試合の流れが変わっちゃう」。ピッチに立てば言い訳は通用しないと、覚悟を持ってプレーした。

 身体は決して万全ではない。2023年1月には右膝蓋骨脱臼と診断され、手術を余儀なくされた。さらに復帰から間もなく同じ右膝蓋骨を骨折してしまう。

 1年1か月の時を経て24年に復帰を果たすが、そこから再び離脱を余儀なくされた。再びピッチに立ったのは10月。最初の負傷から2年弱が経っていた。

 一度は現役引退も頭によぎった。それでも、サッカーを続けると決め、鹿島にやってきた男の覚悟は並大抵のものではない。

 試合後の取材エリアを通る小池の左膝にはアイシングの氷が巻かれていた。両脚にきつくテーピングを巻いてプレーした試合も多い。それでも、ピッチに立てば歯を食いしばって走り続けた。

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