鹿島アントラーズを9年ぶりの優勝に導いた早川友基が、明治安田J1リーグ2025シーズンの最優秀選手賞(MVP)を受賞した。史上2人目となるゴールキーパーの受賞はどのような意味を持つのか。早川本人とJリーグのトップレベルで活躍する2人のゴールキーパーの言葉から、その価値を考える。(取材・文:ショーン・キャロル)[1/2ページ]
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ゴールを止める価値と、ゴールを決める価値
2025年のJリーグMVPに早川友基が選ばれたと最初に知ったとき、正直に言えば私は少し物足りなさを感じてしまった。
ゴールキーパーが最高個人賞を受賞するというのは、どこか盛り上がりに欠けるように思えたし、特にチームメイトの一人がシーズン21得点を挙げ、そのうち2点が最終節での優勝決定弾だったことを考えると、なおさらだった。
しかし、その決定を冷静に受け止めるうちに、私の最初の反応は明らかに不相応だったと気づいた。早川はシーズンを通して素晴らしい活躍を見せ、鹿島アントラーズが9年ぶりとなるJ1優勝を果たす大きな助けとなったのだからだ。
受賞後の早川の言葉を聞き、私の気後れはさらに強まった。26歳の彼は、2010年の楢崎正剛以来となるゴールキーパーのMVP受賞について、驚くほど雄弁に語った。
「まずシュートを止めるということの楽しさを知ってほしい」と、横浜アリーナで彼を囲んだ記者団に早川は語った。
「見ている人の感覚からしたらちょっと違うかもしれないですけど、止めるということはゴールすることと同等の価値があると思うので、そういったところに魅力を感じてほしいと思います」
リーグ2位の16試合のクリーンシートを記録したことを踏まえれば、早川の主張はまったく正しかった。そして、彼自身やゴールキーパーの仲間たちが、チームの成功において果たしている中心的な役割に対して、もっと評価されることを願うのも当然だった。
ランゲラックが語る早川友基「2、3年前に彼を見たとき…」
「ゴールキーパーというポジションが世界的にもそうですし、国内でもより人気になって、誰もが憧れるというか、サッカーをやる選手もみんなキーパーをやりたいというくらいでもいいと思う」と言い、彼はこう続けた。
「今回(の受賞)をきっかけにして見ていただくのも嬉しいですし、いろんな形でいいので、ゴールキーパーについて知っていただけたり、興味を持っていただけたらと思います」
元名古屋グランパスの守護神であるランゲラックも、この日は功労賞を受賞するために会場に姿を見せていた。早川が年間最優秀選手賞を受賞すると知らされると、目に見えて喜びを表していた。
「本当に信じられないし、素晴らしいことだよ」と、発表が正式になる直前に知らされたオーストラリア人は語った。
「ほんの5分前に彼と話して、リーグ優勝おめでとうと言ったばかりなんだ。2、3年前に彼を見たとき、次に日本を代表するすごいゴールキーパーになると思ったと伝えたんだ。だから本当にうれしいよ。
楢崎さん以来のゴールキーパー(での受賞)だよね? 楢崎さんがどんなキャリアを歩んだかはみんな知っているし、早川もその道を歩んでいくと思うよ」
ランゲラックは名古屋で7年間を過ごし、現在はメルボルン・ビクトリーのリザーブチームでGKコーチとしての第一歩を踏み出している。37歳の彼は、日本人ゴールキーパーの成長スピードに大きな希望を感じている。
ライバルが早川友基を語る「賞に匹敵する」
「私が来てから、ゴールキーパーのレベルは本当に大きく上がった」と彼は語った。
「代表監督にとっては大きな問題だよ。いい意味での問題だけどね。たくさん良いゴールキーパーがいて、誰を選ぶべきかわからないんだから。早川、(大迫)敬介、ヨーロッパでプレーしている選手たち、名古屋では(アレクサンドレ)ピサノも成長している。
本当に多くの良いゴールキーパーが出てきている。以前は日本においてゴールキーパーは難しいポジションだったかもしれないけど、将来についてはまったく心配していない」
その一人である大迫も、同じゴールキーパーが最高の賞を受賞したことを喜びつつ、自分と早川が森保一監督を悩ませ続けるためには、高い基準を維持し続けなければならないと語った。
「ゴールキーパーが受賞できる難しさもありますけど、シーズンに通した存在感も発揮していましたし、その賞に匹敵する(活躍だった)と思います」と、サンフレッチェ広島の守護神は話す。
「海外に行く選手も増えていますし、もちろん海外に行くのが正解とは思わないですけど、海外に行ったり、レベルが高い環境に身を置いてプレーしている選手も多くなってきている中で、自分も今はJリーグのプレイヤーとして自分の存在感を発揮しないといけない。
他の選手と同じようなパフォーマンスをしていても上に行けないと思うので、違いを見せながらやっていく必要があると思います」



