
シャーレを掲げる鹿島アントラーズの中田浩二FD【写真:Getty Images】
9年ぶり9度目のJ1リーグ制覇を成し遂げた鹿島アントラーズ。近年はタイトルと無縁のシーズンを過ごすことが多かった常勝軍団は、どのようにして強さを取り戻したのか。Jリーグ開幕当時から続く歩みを振り返りながら、かつての黄金期と現在のチームにある共通点、今に繋がる変化などを、長年鹿島を取材し続ける元川悦子氏の言葉から探っていく。今回は第4回(全6回)。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
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「正直、かなりのプレッシャーが…」

2024シーズンに就任するも途中解任された鹿島アントラーズのランコ・ポポヴィッチ元監督【写真:Getty Images】
1993年のJリーグ開幕時から、鈴木満フットボールアドバイザーが中心となって強化を進めてきた鹿島アントラーズ。
日本サッカー界を代表する偉大な強化トップが2021年末に第一線を退き、2011年から鈴木氏の下で働いていた吉岡宗重フットボールダイレクター(FD=現大分トリニータGM)が後を引き継いだことは、前にも触れた。
「正直、かなりのプレッシャーがありましたね。満さんの後任ということだけでなく、やはり鹿島アントラーズの強化責任者というのは非常に重要なポスト。難しさは感じましたけど『やってやるぞ』という思いもありました。
自分を呼んでくれた満さんと一緒にタイトルを取りたいという気持ちも強かったので、そのために何ができるのかを真剣に考えました」と吉岡氏は語っていたことがある。
ただ、彼が抜擢したレネ・ヴァイラー、岩政大樹、ランコ・ポポヴィッチという3人の監督では、タイトルに手が届かなかった。
ポポヴィッチ監督解任が決まった2024年10月、吉岡氏も責任を取る形で鹿島FDの要職を退くことになった。
「2024年は『今年タイトルを取れなかったら、自分はやめざるを得ない』と腹をくくっていました」と本人もしみじみと話したが、この時点で鹿島の強化体制はいったんゼロからの再構築を余儀なくされたのだ。
強化を託された中田浩二の手腕

鹿島アントラーズのFDを務める中田浩二氏【写真:Getty Images】
そこで強化トップに抜擢されたのが、鹿島のレジェンド・中田浩二現FD。
ご存じの通り、彼は2014年の現役引退後、クラブ・リレーションズ・オフィサー(CRO)として長く営業や事業・ホームタウン活動に従事。その傍らでメディア露出も手掛けていた。
強化に異動することになったのは2024年頭。本人も「クラブを立て直さないといけない時期だし、自分に白羽の矢が立ったのならやるしかない」と決断。メディアの仕事も整理して、強化担当として新たなキャリアを踏み出した。
それから1年も経たないうちにFDの要職を抜擢されるのは異例中の異例。それでも小泉文明社長からの直々のオファーを断るわけにはいかない。覚悟を持って2025年シーズンへの準備を始めたのだ。
そんな中田新FDが昨年末に講じた一手が、先輩・鬼木達監督の招聘だった。
鹿島OBであり、川崎フロンターレ時代に国内7冠を獲得している偉大な指揮官にチームを任せれば、必ず常勝軍団復活への布石を打てると確信していたはず。
熱意を持って説得し、合意を取り付けると、それに見合った戦力補強が必要だと小泉社長らファイナンスチームに掛け合い、これまで以上の強化費捻出にこぎつけた。
その成果が今季21ゴールで得点王に輝いたレオ・セアラ、横浜F・マリノス時代に優勝を経験している小池龍太、センターバック(CB)のバックアップ要員・キム・テヒョンらの補強だった。
さらにレンタルで外に出していた荒木遼太郎、松村優太を呼び戻し、これまで以上に分厚い選手層を築き上げたのだ。
想定外の連続離脱が襲ったシーズン序盤

多くの怪我人に悩まされた今季の鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】
この陣容で2025シーズンに向けて始動したが、例年にない豪華戦力に鹿島サポーターの期待値は大いに高まった。
その反響を受け、中田FDは宮崎キャンプの際、「シーズンが終わった時、成績が芳しくなかったら、何て言われるのかな…」と苦笑いしていたが、どう転ぶか分からないという不安も少なからず脳裏をかすめたことだろう。
実際、シーズン中には想定外の出来事が次々と起きた。
2024年後半の長期離脱から戻ってきた濃野公人、鬼木体制でボランチの主軸になりつつあった樋口雄太、最終ラインから右MFまでマルチにこなしていた小池、攻撃面で推進力を発揮していた師岡柊生が4月に相次いで負傷。特にアキレス腱断裂の師岡はシーズンを棒に振る大ケガを強いられた。
5月に入ると植田直通と鉄壁のCBコンビを形成していた関川郁万が長期離脱。さらに6月には左サイドバック(SB)を担い続けていた安西幸輝も負傷し、シーズン復帰が困難となった。
軸を担うはずのメンバーが使えなくなり、鬼木監督も中田FDも頭を痛めたはずだ。
しかし、2024年までの鹿島は窮地に立たされた時、効果的な補強ができないケースがしばしば散見されたが、今季は違った。