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J1 23時間前

“ジェネレーター”と呼ばれた男。ファジアーノ岡山、白井康介が走り続けるワケ「変わらずにずっと体現してきた」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images
ファジアーノ岡山、白井康介

ファジアーノ岡山の白井康介【写真:Getty Images】



 明治安田J1百年構想リーグ第6節が14日に行われ、ファジアーノ岡山は清水エスパルスにPK戦の末敗れた。かつて恩師から“ジェネレーター(発電機)”と名づけられた白井康介は、チームに熱と勢いを生み出す存在として走り続けてきた。岡山で迎えた新たな挑戦のなかで、白井はさらにプレーの幅を広げようとしている。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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「自分はいままで…」

ファジアーノ岡山、白井康介

ファジアーノ岡山の白井康介【写真:Getty Images】

 武器を発揮する場面がなかなか訪れず、試合も1-1から突入したPK戦も2-4で落とした。

 悔しさを募らせた一戦でも、ファジアーノ岡山の白井康介はしっかりと爪痕を残していた。それはJリーグが各試合後に公式ホームページ上で発表するスタッツ内の一項目に反映されている。

 清水エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平に乗り込んだ14日の明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンドWEST第6節。白井がマークしたスプリント回数は両チームを通じて最多の21回だった。

 直近の一戦だけではない。FC東京から半年間の期限付き移籍で加入した今シーズン。ここまで5試合で先発フル出場している31歳の白井は、そのうち4試合でチーム最多のスプリント回数をマークしている。



 名古屋グランパスとの第4節では27回に到達。山根永遠の18回が最多だったガンバ大阪との第3節でも、江坂任とともに2位の15回を数えた。90分間あたりの平均スプリント数は約21回となっている。

「自分はいままで縦へ突破する推進力であるとか、対人で仕掛けるプレーが売りだったので」

 自身のストロングポイントをあげた白井は、それらをなかなか出せなかった清水戦をこう振り返った。

「ずっと相手のペースに…」

ファジアーノ岡山、白井康介

ファジアーノ岡山の白井康介【写真:Getty Images】

「前節でうまくいっていた、ボールを奪ってからひとつ繋ぐプレーや、いい状態からボールを前線へ届けるプレーを出せず、ずっと相手のペースになってしまったなかでなかなかスタイルを出せませんでした」

 主戦場とする右ウイングバック(WB)で先発し、65分からは山根が務めていた左WBに回った京都サンガF.C.との第5節。84分に岡山が決めた待望の先制点をさかのぼっていくと白井に行き着く。

 右サイドを攻めあがった立田悠悟が、ゴールラインぎりぎりから放ったクロスがファーへ流れる。無人だった左サイドを駆けあがり、ボールを拾った白井が切り返しから相手をかわして右足でクロスを送る。



 柔らかい軌道を描いたボールはファーで待ち構え、タイミングを合わせて跳びあがった河野孝汰の頭と完璧にヒット。折り返したボールを、右WBから中へ入ってきた松本昌也が押し込んだ。

 値千金の先制点を最後まで死守。90分間における百年構想リーグ初勝利をホームのJFE晴れの国スタジアムで手にした京都戦でも、白井のスプリント回数は両チームを通じて最多の23回を数えていた。

 そして古巣となる京都のベンチには、白井が「思い出深いですね」と目を細める曺貴裁監督がいた。

『こいつはものになる』と思った

白井康介
湘南ベルマーレ時代の白井康介【写真:Getty Images】

 愛知県豊橋市で生まれ育った白井は大阪桐蔭高校から2013シーズンに、曺監督が率いる湘南ベルマーレに加入。すぐに日本フットボールリーグ(JFL)を戦っていた福島ユナイテッドFCへ期限付き移籍した。

 翌2014シーズンに湘南へ復帰するも、J2リーグでの出場はわずか1試合。チームがJ1へ復帰した翌2015シーズンにはリーグ戦のピッチに立てないまま、9月にJ2の愛媛FCへ期限付き移籍した。

 そのシーズンのオフに愛媛へ完全移籍した白井を、曺監督は後にこう振り返っている。



「最初に湘南でプレーしたときの康介は、プレースピードや判断が間に合わなくて、練習でしょっちゅう泣いていました。でも、そういう姿を見て『こいつはものになる』と思ったというか、毎日の練習に対する負けず嫌いな姿勢がその後の康介を作ってきた。あまりいないじゃないですか。感情を表に出す選手は」

 その後の白井は愛媛での2シーズン半で90試合、完全移籍したJ1の北海道コンサドーレ札幌では3シーズンで60試合に出場。リーグ戦で濃密な経験を積み重ね、自信を膨らませてきた過程で、高校時代に「浪速のロッベン」なる異名をつけられていたプレースタイルをプロ仕様にグレードアップさせた。

 迎えた2021シーズン。当時J2を戦っていた京都に期限付き移籍した白井は、このシーズンから監督に就任した曺氏と再会を果たす。そしてJ1昇格を果たした翌2022シーズンから特別な肩書きがついた。

 それは他のチームでは、おそらく見られない「ジェネレーター」という役職だった。

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