鹿島アントラーズの田川亨介【写真:Getty Images】
明治安田J1百年構想リーグ第7節が18日に行われ、鹿島アントラーズはFC町田ゼルビアに3-0で勝利した。激しいポジション争いのなかで巡ってきたチャンスを、田川亨介は確実にものにした。際立ったのは、チームを勝利へ導く判断力と献身性。成熟したプレーが、充実の鹿島にさらなる選択肢をもたらしている。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
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「絶対に自分でシュートを打とうと…」
鹿島アントラーズの田川亨介【写真:Getty Images】
全身に激しく脈打たせていたストライカーのエゴイズムを瞬時に捨て去った。
前線から発動させた激しいプレスで、FC町田ゼルビアのパスミスを誘発した直後。右サイドでボールをカットした鹿島アントラーズの松村優太が、すかさず相手ゴール正面にいた田川亨介へパスを託した。
「ボールを受ける前は完全にフリーだったので、絶対に自分でシュートを打とうと思っていました」
攻守が入れ替わった瞬間をこう振り返った田川は、松村に正対した体勢で利き足の左足でパスをトラップ。逆時計回りで体をターンさせた視界に、それまではインプットされていなかった情報が飛び込んできた。
対峙した町田の白崎凌兵が、明らかに田川の左足を警戒している。その右後方にはボランチの位置から白崎に積極果敢なハイプレスを仕掛け、パスミスを誘発した三竿健斗がそのまま残っていた。
ペナルティーエリアの外側にいた自分が放つミドルシュートと、内側でパスを受ける体勢を整えていた三竿。どちらがゴールを生み出す確率が高いのか。田川が答えを弾き出すのに時間はかからなかった。
「チーム的には狙い通り」
ゴールを決めて喜ぶ鹿島アントラーズの選手たち【写真:Getty Images】
「ターンしたときに(三竿)健斗くんがいい守備から本当にいい場所に立っていてくれたのが見えたので。確率の高いほうに、と思ってすぐに切り替えたパスが得点につながって本当によかったです」
十分に引きつけられてからのスルーパスに白崎は反応できない。危機を察知して懸命に戻ってきた中山雄太も間に合わない。三竿のシュートは町田の守護神、谷晃生の右つま先をかすめてゴールに吸い込まれた。
MUFG国立競技場で18日に行われた明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンドEASTグループ第7節。1位の鹿島と2位の町田が対峙した頂上決戦は、鹿島の2点目が決まった44分に事実上、勝負がついた。
最終的には3-0で町田に圧勝。破竹の連勝を6に伸ばした試合後に田川が声を弾ませた。
「前半から畳みかけられたのがすごくよかったし、チーム的には狙い通りという感じでした」
百年構想リーグの開幕直後に27歳になった田川は、7戦目にして初めて先発をつかみ取っていた。鬼木達監督から先発を告げられたのは「2日前だったかな」と振り返ったレフティーはこう続けている。
「いつも通りやればいい」
鹿島アントラーズの田川亨介【写真:Getty Images】
「よっしゃ、とは思わなかったですね。練習の段階から自分自身のプレーの感覚そのものも悪くなかったので、特にそんなに構えることもなく、いつも通りやればいい、という感じで冷静に入れました」
開幕直前の練習中に味方と接触し、左足首を痛めて戦線離脱を余儀なくされた。何度も苦しめられてきた筋肉系のトラブルを避けるための努力を重ねてきたなかでのアクシデント。田川は思わず涙している。
幸いにも骨に異常がなく、捻挫と診断された田川は第3節までを欠場。復帰へ向けてリハビリを積み、浦和レッズとの第4節以降の3試合で合計27分間プレーして、2トップの一角での先発を手繰り寄せた。
ストライカーならば誰でも目に見える結果が、つまりゴールがほしい。田川の場合、昨年8月10日のFC東京とのJ1リーグ第25節を最後に、ゴールから遠ざかっていたからなおさらだろう。
だからこそ、ストライカーのエゴイズムよりチームのゴールを上位に置き換えた場面が輝きを放つ。
「あそこでしっかりとパスを出せるところを含めて、チームプレーにも本当に徹してくれる」
三竿へのスルーパスを優先させた田川の判断を称賛した鬼木監督は、さらにこう続けている。
「彼のスピードや強度(の高さ)は、日本ではなかなかいないんじゃないかと。(鈴木)優磨とレオ(・セアラ)の2トップが多いなかで、なかなかチャンスがない状況でしたけど、あの3人は常に競り合っていて、誰が先発で出ても、むしろ(田川が)先発で出てもおかしくないくらいのものを練習でも見せてくれている」