横浜F・マリノスの近藤友喜【写真:Getty Images】
もう一段階上のレベルの選手になるためー。近藤友喜は今季、北海道コンサドーレ札幌から横浜F・マリノスに強い覚悟を持って移籍してきたが、ここまで途中出場が多く、なかなか結果を残せずにいた。5月6日のFC町田ゼルビア戦は巡ってきた先発の機会だったが、自身の長所を出せず、68分でピッチを退いた。悔しさの残る一戦に25歳のアタッカーは何を思ったのか。(取材・文:竹中愛美)
明治安田J1百年構想リーグ・地域ラウンド第15節
FC町田ゼルビア 2-0 横浜F・マリノス
町田GIONスタジアム
「きょうはそこに尽きる」近藤友喜が口にした申し訳なさ

今季、横浜F・マリノスに完全移籍加入した近藤友喜【写真:Getty Images】
ピッチから退き、ベンチに座った後ろ姿が、なんだか悲しげで、歯がゆそうに見えた。
近藤友喜の今季4度目の先発は、自身の持っている武器を遺憾なく発揮するとは決して言い難かった。
今季はここまで12試合に出場しているが、途中出場が多く、主戦場である右サイドにおいて、チーム内での序列を上げられていないのが現状だ。
連戦による過密日程を考慮しても、FC町田ゼルビア戦はアピールのチャンスだったはず。
「僕のところがブレーキになっていたかなという印象なので、サポーターの皆さんにもチームメイトにも申し訳ないなという思いです」
近藤の表情は硬かった。
これは結果論だが、前半はボランチがポケットに進入してチャンスを作ったり、相手のボールを奪取してからカウンターを仕掛けたりと、横浜F・マリノスのほうがやや町田を押し込んでいた場面もあった。
だが、そのチャンスをふいにすると、後半はギアを上げてきた町田に対し、少ないチャンスをモノにされた。
「カウンターだったり、前向きでボールを蹴れるシーンが何シーンもありましたけど、相手にとって怖いプレーができていたかと言われると、できていなかったなと思います。きょうはそこに尽きるかなと思います」
マリノスの攻撃は単調だった。ロングボールを主体に相手の背後を取る配球が目立ったが、優位性をなかなか作ることができず、ビルドアップにおいても無理に蹴り出して、ボールをロストする場面も少なくなかった。
「前半の途中からもどんどん相手がマンツーマンではめに来ているので、自分のところで背後を取って欲しいというような指示は受けていた。そういうシーンが出せれば良かったですけど、なかなか出しきれなかったのかなというような印象です」
近藤自身、スピードを活かしたドリブル突破は影を潜めた。後半に入ってからは対峙するセンターバックの昌子源に止められるシーンもあった。
閉塞感のある攻撃を打開するには至らず、交代を告げられた後、ベンチで何を思っていたのだろうか。
近藤友喜が挙げた自身に必要なこととは
横浜F・マリノスの近藤友喜はFC町田ゼルビア戦に先発し、左サイドでプレーした【写真:Getty Images】
「1番は申し訳なさ。このチームに呼んでくれた強化部の方だったり、応援してくれる方だったり、一緒に戦っている選手だったり、いろんな期待があって、チームの代表としてピッチに立っているので、もっとプレーで表現しなきゃいけない。
現状、それができていないと思うので。でも、こればかりは、自分のプレーはピッチで証明するしかないので、下を向かずにできればいいかなと思います」
近藤は自身に必要なこととして、「左でも仕掛けに行く姿勢だったり、縦に行かないと怖くないと思うので、そこの駆け引きと、技術の部分は足りないかなと思います」と言葉を繋いだ。
自身の特徴を出すことも大事だが、チームに適応することも等しく重要だ。右サイドが本職である近藤にとって、難しい部分は当然あるだろうが、そこを理由にはしなかった。
「(右と左で)感覚的な違いは、それはあるにはありますけど、ピッチに立つ以上、そこは関係ないので、左サイドを任されている以上、そこでチームとして求められていることをやらなきゃいけない。右だからとか、左だからとかは言い訳かなと思います」
自らのふがいなさを誰よりも痛感しているのは、近藤自身だろう。反省の弁ばかりが口をつく中、取材エリアで前橋育英高校の先輩である町田の岡村大八が後ろから近藤にちょっかいを出してきた。
岡村はセンターバックの中央で、左の近藤とマッチアップをする場面は、4分の競り合いくらいだろうか。あまり多くはなかったが、先輩がいたずらっぽく絡んできたこともあり、近藤の表情が少し柔らかくなった。
せっかくなので、先輩との対戦はどうだったのか聞いてみた。
「(ピッチに)立てたのは良かったですけど…」
トレーニングで汗を流す横浜F・マリノスの近藤友喜【写真:編集部】
「育英の先輩ですし、札幌(北海道コンサドーレ札幌)でも一緒にやっていて、プレーヤーとしてもそうですし、人としてもすごく尊敬できる部分がある先輩。
開幕戦で僕がピッチに立てなかったので、『後期、ピッチに立てるように頑張れよ』というのは言われていたので、立てたのは良かったですけど…もっと成長しなきゃいけないなとは思いました」
町田の主力として、先日のAFCチャンピオンズリーグエリートで準優勝に貢献するなど、先輩・岡村の活躍に続いていきたい気持ちは当然ある。
「ハチ君(岡村大八)は札幌のときもマンツーマンで守っていて、後ろを1人で守っているような状態だったので、すごく助けてもらっていました。そういう選手が町田に行って、アジアの舞台で活躍している姿はすごく刺激になりますし、まだまだ力の差はあると思いますけど、負けないように頑張っていきたいなと思います」
近藤にとって、この日の敗戦以上に、自身のプレーの出来に対する課題は大きなものがあるだろう。それでも、下を向いている時間などない。
チーム内での序列を上げるためには、一層の活躍が必要になってくる。苦い経験を糧にして、進んでいかなければ成長はないはずだ。
「1番はやっぱり数字だと思うので、そこに繋がるドリブルや仕掛けに行く意識の部分はもっともっと上げないといけないなと思います。あとは守備の強度もやっていかなきゃいけないなというふうには思います」
百年構想リーグの地域リーグラウンドは残り3試合。短い時間の中でどこまで爪痕を残すことができるのか。
武器である縦への突破を活かして、自身の存在意義を証明しにいく。
(取材・文:竹中愛美)
【著者プロフィール:竹中愛美】
1990年、北海道生まれ。Jリーグ開幕で世の中がサッカーブームに沸いていた幼少期、「入会したらヴェルディ川崎のボールペンがもらえる」の一言に釣られて地元のクラブでサッカーを始める。以降、サッカーの魅力に憑りつかれた日々を送ることに。ローカルテレビ局時代に選抜甲子園や平昌冬季五輪、北海道コンサドーレ札幌などを取材し、2025年よりカンゼンに所属。FWだったからか、この限られた文字数でも爪痕を残したいと目論むも狭いスペースの前に平伏す。ライターとして日々邁進中。
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