
ベガルタ仙台の石井隼太【写真:Getty Images】
左足を引きずりながらも、石井隼太の表情はどこか晴れやかだった。利き足を削られながら同点弾を呼び込み、さらに逆転ゴールも演出。ベガルタ仙台の左サイドを支える24歳は、昨季の悔しさを乗り越え、今季ついに定位置をつかみ取った。森山佳郎監督も認める左ウイングバックで、石井は持ち前のスタミナと推進力を解き放っている。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
明治安田J2・J3百年構想リーグ・地域ラウンドEAST-A第15節
ベガルタ仙台 2-1 栃木SC
ユアテックスタジアム仙台
「自分がインナーラップすればいける」

ベガルタ仙台の石井隼太【写真:Getty Images】
左足をちょっぴり引きずりながら、ベガルタ仙台の石井隼太は試合後の取材エリアに姿を現した。
シューズどころかソックスも履いてない甲の部分を、氷を詰めたビニール袋で冷やしている。
「相手にスライディングされたときですね。アドレナリンが出ていたので試合中は大丈夫でしたけど」
苦笑しながら石井が振り返った場面は、ホームのユアテックスタジアム仙台に栃木SCを迎えた、6日の明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドEAST-Aグループ第15節の前半終了間際に訪れた。
自陣の左サイドでDF奥山政幸からパスを受けた石井が、左タッチライン際にポジションを取ったFW岩渕弘人へ縦パスを通した直後。岩渕の内側に空いたラインを、石井が一気に駆けあがりはじめた。
「前半はバックパスが多くて、どこかで前へ出てチャレンジしなきゃいけないと思っていたなかでブチくん(岩渕)がしっかりと収めてくれた。相手が来ていたので、自分がインナーラップすればいけると」
栃木の3バックの右を務める内田航平が岩渕に食いついてくる。必然的にやや内側にポジションを取っていた石井の前方にスペースが生まれる。
スカウティング通りの展開だったと石井が続ける。
「ユウが見えた」。石井隼太が選んだ最善の一手

ベガルタ仙台の岩渕弘人【写真:Getty Images】
「そこでブチくんがいいところに出してくれて、いい感じでつながりました。あとは自分がドリブルで持ち運べば、さらに相手も出てくる。そこでユウ(中田有祐)が見えたので、ワンツーを選んで」
力強いドリブルで一直線に突進していく石井に対して、栃木の選手たちが後手を踏み続ける。さらにバイタルエリアに入ったあたりで、右前方にいたFW中田有祐(ゆう)とワンツーを成功させる。
さらに加速した石井が、一気に栃木のペナルティーエリア内へ侵入した直後だった。
懸命に戻り、シュートを防ごうとしたMF食野壮磨のスライディングが石井の利き足を刈り取った。
「切り返してから(右足で)シュートを打とうと思ったんですけど、相手にスライディングされて。得点シーンはちょっと見られなかったけど、ユウが『決まったよ』と教えてくれました。うれしかったですね」
その場にうずくまり、食野のファウルをアピールした石井は、自身をフォローしてきた岩渕の姿に「ちょっと気がつかなかったですね」と再び苦笑する。
対照的に岩渕は以心伝心だったと胸を張った。
「隼太はものすごく推進力があるので狙い通りでした。スピードをもって前へいくのが隼太のよさですし、自分もボールがこぼれてくると信じて走っていきました。シュートはうまく当たりませんでしたけど」
「取り返さなきゃいけない、という気持ちが…」

水戸ホーリーホック在籍時の石井隼太【写真:Getty Images】
開始14分に先制されたまま時間が経過していた一戦を振り出しに戻し、エンドが変わる後半へ勢いもつける千金の同点弾。直後にハーフタイムを迎えたスタンドからは「イシイコール」が響きわたった。
自らの名前が連呼される光景を喜びながらも、石井は反省点をあげるのも忘れなかった。
「セカンドボールの争いで、僕が相手に当ててしまった流れで失点したので取り返さなきゃいけない、という気持ちがありました。その意味でも前半終了間際の同点ゴールが本当に大きかったと思っています」
城西国際大学から当時J2の水戸ホーリーホックへ2024シーズンに加入した石井は、そのオフに仙台へ完全移籍した。しかし、昨シーズンは出場11試合、プレータイム388分に終わってしまった。
昨シーズンの仙台は基本的に4バックで戦い、右サイドバック(SB)では真瀬拓海(現・水戸)が全38試合に出場した。必然的に「チームとして右肩あがりの戦術をとっていました」と石井も振り返る。
「左はなるべく低い位置でビルドアップに参加して、チャンスがあれば上がっていく感じでした」
左SBの主軸は石尾陸登(現・ジェフユナイテッド千葉)となり、さらに奥山が続いた。
利き足の左足から放つ正確なクロスと無尽蔵のスタミナを武器とする石井の先発はわずか2試合だった。