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「最初よりはマシになりました」嶋本悠大が清水エスパルスで挑む右IH。開幕スタメンを掴んだ19歳、その完成はまだ先【コラム】

シリーズ:コラム text by 榊原拓海 photo by Getty Images,Sakakibara Takumi
清水エスパルス 嶋本悠大 26/27明治安田J1リーグ第1節 vs名古屋グランパス

清水エスパルスの嶋本悠大【写真:Getty Images】



 清水エスパルスは8月8日、2026/27明治安田J1リーグ開幕節で名古屋グランパスを0-1で下した。右インサイドハーフで先発フル出場した嶋本悠大は、明治安田J1百年構想リーグで主戦場とした左インサイドハーフとは異なる役割を求められている。U-21日本代表にも選出された19歳は、開幕スタメンを掴むまでに何を学び、どんな課題と向き合ってきたのか。(取材・文:榊原拓海)[1/2ページ] 

【2026/27明治安田J1リーグ第1節】
2026年8月8日 名古屋グランパス 0-1 清水エスパルス
(豊田スタジアム)

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左IHを務めていた嶋本悠大が右IHとして求められる役割

26/27明治安田J1リーグ第1節 名古屋グランパス×清水エスパルス

嶋本悠大(前列右から2番目)は開幕戦に右インサイドハーフとして先発した【写真:Getty Images】


 2026/27明治安田J1リーグの開幕節、清水エスパルスが10人の状況で苦しみながらも、名古屋グランパスを0-1で破った一戦に、嶋本悠大は右インサイドハーフ(IH)のポジションで先発し、フル出場した。

 半年間の特別シーズンに行われた明治安田J1百年構想リーグでブレイクのきっかけを掴み、12試合出場3ゴールと数字も残したのだから、当然という見方もあるのかもしれない。

 しかし、右IHで先発を掴むまでに至ったことを見落としてはならない。もがき、苦しみながら、彼はこのポジションを少しずつ自分の居場所へと変えようとしている。

 前提として、吉田孝行監督が率いる清水の【4-3-3】では、IHの左右で求められる役割が大きく異なる。

 左IHの選手は、保持の局面では流動的に背後を狙い、非保持の局面ではワントップとともにプレスのファーストラインで牽制をかける。いわば、セカンドトップやシャドーと似た役割が与えられている。

 一方で、右IHはより複雑だ。保持の局面では後方と前方を繋ぐ潤滑油のような役割を果たしながら、クロス攻撃の際にはゴール前まで飛び込んでいくことも求められる。加えて、非保持の局面になれば、アンカーの選手とダブルボランチを形成し、ボールと相手の位置に応じて細やかなポジションの調整をしなければならない。

 嶋本が百年構想リーグでプレーしていたのは、左IHのポジションだった。積極果敢な仕掛け、ゴール前への飛び出し、磨きをかけたシュートセンスなどを披露し、一気に不動の立ち位置を手にした。自らを「攻撃的な選手」と語るだけあって、このポジションは“天職”だったように映った。

 しかしながら、26/27シーズンに向けてチームが始動し、本格的な戦術練習を取り入れたオーストリアキャンプでは、嶋本のポジションが変わっていた。左IHではなく、右IHでプレーしていたのだ。

「良いものを持っていてもこれより上にはいけません」。19歳に突きつけられた新たな課題

オーストリアキャンプにて、練習試合でプレーする清水エスパルス 嶋本悠大

オーストリアキャンプにて、練習試合でプレーする嶋本悠大【写真:榊原拓海】


 これは、チーム事情による影響も大きい。不動の存在だった宇野禅斗のボルシアMG移籍に伴い、右IHのポジション争いは横一線からのスタートとなったが、代役としてFC東京から新加入した小泉慶がプレシーズン期間に負傷。百年構想リーグで9試合に出場した弓場将輝もコンディション不良に見舞われた。

 これらの背景を踏まえ、嶋本は小塚和季や大畑凜生ら、このポジションを主戦場としている選手たちと鎬を削ることとなった。実際、当時の吉田監督も、嶋本の右IH起用について、「今は意図的にやらせている段階」と口にしていた。

 こうして右IHに挑戦することとなったが、滑り出しは順調ではなかった。キャンプ中の初陣だったポリッスヤ・ジトミール(ウクライナ1部)との練習試合を受けて、吉田監督は「局面を切り取って見ると、良い部分もある。球際やスタミナなど、良いものは持っていますよ」と口にしながらも、次のように厳しい言葉も残していた。

「やれる能力は持っているのに、1個動いたあとで、止まっていることも多いんですよね。ボールの位置が変わったら、ポジションを修正するなど、常に考えて動き続けないと。良いものを持っていても、(今のままじゃ)何にも意味がないし、これより上にはいけません」

 もちろん、こうした言葉の裏には、ロサンゼルスオリンピック世代の日本代表にも名を連ねる19歳の未来への期待も込められている。だが、事実として、当時の吉田監督の評価がすこぶる高かったわけではなかった。

 キャンプ中の2戦目だったカールスルーエSC(ドイツ2部)との練習試合でも、主力組の一人として先発したが、不足点も露呈した。

 道のりは決して平坦ではなかったからこそ、開幕戦では実績豊富な小塚に右IHを任せる選択肢もあったが、吉田監督は、徐々に課題を克服しながら成長を続ける嶋本にこのポジションを託すことを決断した。

「最初よりはマシになりました」。嶋本悠大が開幕戦で示した武器

清水エスパルス 嶋本悠大 26/27明治安田J1リーグ第1節 vs名古屋グランパス

清水エスパルス加入2年目の嶋本悠大【写真:Getty Images】


 こうして迎えた名古屋戦。残念ながら、試合序盤を中心に、名古屋の選手にボランチの間を抜けるパスを通されるシーンも散見された。「(IHの)左と右とで役割も違うし、いるべき場所も違うので、最初はすごく難しかったです」とは本人の弁だ。

 しかしながら、「守備のときに間を通されるのが一番良くないので、優先順位として間を通させないことを意識しました。段々慣れてきたのは良かったです」との言葉のとおり、右ウイングの北川航也のサポートも受けながら、求められる動きを見せられるシーンもあった。

 ポジショニングこそ“満点”とは言えないかもしれないが、彼なりの武器を示したことは好印象だった。たとえば運動量。この試合で記録した11.363kmの走行距離は、両チームの選手の中でトップだった。

 加えて、デュエル勝利総数の5回も、両チーム最多の数字。「今は守備メインでやることを覚えている」と話す中で、まずは等身大の自分ができることを示した。

 当たり前の話にはなるが、嶋本は守備“だけ”の選手ではない。「攻撃に参加しないと自分の良さは出ない。我慢できないと言ったら語弊がありますけど、当然、攻撃に関わりたい気持ちはあるので」と話すのも頷ける。チームの一人として求められる守備だけでなく、攻撃でバリューを示してこそ、嶋本がスタメンに入る意義がある。

 オ・セフンの退場に伴い、チームが10人となった直後の65分のシーンは、その象徴だった。ピッチ中央でボールを受け、周囲の状況を確認しながらドリブルで中央を破って入り、右足で強烈な枠内シュートを放った。

「我慢できないと言ったら語弊がありますけど、攻撃に参加したい気持ちは強いです。(当該シーンは)良い感じで攻撃に関わることができました」と語るのも彼らしい。

 もちろん、このワンプレーだけで開幕戦のすべてを良しとしたいわけではない。むしろ、試合全体を振り返ると、改善点の方が多かった。ただし、彼がキャンプから確かな成長を遂げたことは明白な事実。それは、「最初よりはマシになりました。まだまだですけど」と語る彼自身が、誰よりも実感している。

 そしてもう一人、彼の確かな成長を目の当たりにしている人物がいる。吉田監督だ。

 チームとして明確な手応えを掴んだ試合の後で、個人の話を聞くのはどうかと思いつつも、吉田監督に嶋本の評価を聞いた。キャンプのときと比較して、指揮官の評価がどれほど変化しているのかが、素直に気になったからだ。

 吉田監督の回答は、次の通りだった。

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