
ジュビロ磐田 乾貴士【写真:Getty Images】
2026/27明治安田J2リーグで開幕2試合未勝利だったジュビロ磐田は、第3節で徳島ヴォルティスを2-1で下し、今季初勝利を挙げた。秋葉忠宏監督が「もう最高ですよ」と称えたのが、今季初先発で90分間プレーした38歳の乾貴士だ。得点もアシストもつかなかった背番号23は、攻守でどのようにチームのスイッチを入れたのか。(取材・文:河治良幸)[1/2ページ]
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【2026/27明治安田J2リーグ第3節】
2026年8月22日 ジュビロ磐田 2-1 徳島ヴォルティス
(ヤマハスタジアム)
38歳の新加入に託された「ジュビロらしさ」

ジュビロ磐田 乾貴士【写真:Getty Images】
90+2分。ジュビロ磐田が左サイドから攻撃を仕掛ける。吉村瑠晟のロングスローから生まれたセカンドボールを井上潮音が拾い、再び吉村へ。
ライン際からつながったボールを受けた乾貴士がファウルを受け、良い位置でFKを獲得した。キッカーの井上が右足で送り込む。そこへ太田龍之介が入り、ヘディングでゴールネットを揺らした。
2-1。徳島ヴォルティスを破り、磐田が2026-27シーズン初勝利を手にした。
その決勝点につながるFKを獲得したのが、90分間ピッチに立ち続けた38歳の乾だった。
もちろん、このワンプレーだけではない。前線からの守備では率先してスイッチを入れ、攻撃では相手のライン間へ顔を出す。
危険な縦パスで局面を動かし、自らもゴールを狙った。秋葉忠宏監督が徳島戦で取り戻そうとしていた「ジュビロらしいフットボール」。その先頭に立っていたのが乾だった。
「とりあえず勝てたことが大きいです。前半の入りもすごく良くて、先制もできました。ただ、1失点がもったいなかったですし、すごく自分たちを苦しめたので、その辺はしっかり反省したいです。でも、みんなでしっかり勝ち切れたことが大きかったかなと思います」
乾がまず口にしたのは、自身のパフォーマンスではなくチームの勝利だった。
「ジュビロらしいフットボール」を取り戻すために
開幕のブラウブリッツ秋田戦は1-1。続く横浜FC戦は1-3で敗れた。特に横浜FC戦後、秋葉監督が問題視したのが、キャンプから取り組んできたはずの前線からのプレッシングだった。前半は相手に十分な圧力を掛けられず、0-1となった後半になってようやく本来の姿を取り戻した。指揮官は徳島戦までの1週間、その部分を繰り返し選手たちへ求め、ピッチの中から基準を示す役割を乾に託した。
「もう最高ですよ」
試合後、秋葉監督は38歳のパフォーマンスをそう評価した。
「38歳をちょっと休ませてやりたいと思っていましたけど、チームがこのような状況だったので、もう一度『ジュビロらしいフットボールって何なの?』ということを体現するために、真っ先に貴士のことが頭に浮かびましたし、必ず彼ならチームをまとめて引っ張ってくれると思いました」
求めたのは、攻撃だけではない。むしろ徳島戦で乾に託された重要な役割の一つが、守備のスイッチを入れることだった。本人にも、その意識は明確にあった。
前半シュート9対1。乾が入れた守備のスイッチ

ジュビロ磐田 秋葉忠宏監督【写真:Getty Images】
「自分自身がどうこうというよりも、勝つことだけを考えてやっていました。そのために、前からファーストプレスをかけられるようにというところだけを意識してやりました。もちろん自分が得点を取れれば一番でしたけど、誰が取ってもいいので、とにかく勝点3を取れたことが今は一番です」
その姿勢は立ち上がりからチーム全体へ伝播した。
ボールを失えば前線から追い、後方もそれに合わせて押し上げ、セカンドボールを回収する。そして再び攻撃へ移る。
前半のシュート数は磐田9本、徳島1本。徳島にほとんど攻撃の時間を与えず、相手陣内へ押し込んだ。
「横浜FC戦はなかなかそういう部分ができなかったので、秋葉さんもこの1週間はずっとそのことを言ってきましたし、それをみんなでできたのは良かったと思います。ただ、もっとできるところもあると思うので、これに満足せずやっていきたいと思います」
秋葉監督の評価は、さらに踏み込んでいる。
「それを一番トレーニングで表現してくれていたのが貴士でした。それは攻撃だけではなく、あのように守備のスイッチも入れられて初めて一人前だと話しています。どちらかしかできないのは、僕の中では半人前です」
攻撃で違いを作れるだけでは足りない。
ボールを失った瞬間に切り替え、前から相手を追う。前線の選手が最初に動くことで、チーム全体を前へ押し出す。
秋葉監督は開幕2試合のプレッシング強度について「全然行ってねえな」と感じていたという。その状況を変えるために、38歳の経験と姿勢を必要とした。
「やっぱり百戦錬磨の貴士は、どういうふうにチームを蘇らせるかを分かっています。それを身をもって、先頭に立って、引っ張ってくれたからこそ、こういうゲームができましたし、あのプレス強度につながったと思います」
ライン間から先制点へ。攻撃でも示した違い

ジュビロ磐田 乾貴士【写真:三原充史】
そして乾が違いを見せたのは、もちろん守備だけではない。立ち上がりから徳島の中盤と最終ラインの間でボールを引き出し、前を向く。
そこから縦へのプレーを選択し、相手守備陣を動かした。13分の先制点は、その象徴だった。
ライン間でボールを受けた乾がジョアン・ヴィクトルを使い、そこから生まれたチャンスを最後はイアゴ・テレスが仕留める。
乾自身も、徳島の守備の構造を感じながらプレーしていた。
「徳島のボランチやDFラインが僕のところを捕まえきれていなかったので、フリーになることも多かったですし、前を向けるチャンスもありました。その中でもっと前を向いて仕掛けていければ良かったですが、1点目はその流れからジョアンをうまく使えましたし、ゴールにつなげられたのは良かったと思います」
相手に捕まえられない場所へ動き、ボールを引き出す。前を向けば、ゴールへつながる縦へのプレーを狙う。守備ではプレッシングのスイッチを入れ、攻撃では前進のスイッチを入れる。この日の乾が担った役割は、攻守でつながっていた。
ただ、磐田は圧倒した内容を簡単には勝利へ結び付けられなかった。43分、児玉駿斗のFKから山越康平にヘディングで決められ、1-1。ほとんど相手にチャンスを与えていなかった中で追いつかれた。乾も「1失点がもったいなかったですし、すごく自分たちを苦しめた」と反省する。それでも、チームは崩れなかった。