アンドレア・ピルロが語るEUROの激闘と涙の理由(前編)【欧州サッカー批評 6】

『UEFA EURO2012 イタリア代表の軌跡』
2012年のEUROで、快進撃を続けたイタリア。開幕直前に大敗した親善試合、再び加熱した八百長疑惑の渦中で結束したアズーリの心情と戦いの軌跡。アンドレア・ピルロの証言とともに振り返る。

2012年12月11日(Tue)21時02分配信

text by 宮崎隆司 photo Kazuhito Yamada
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前評判を覆す活躍を見せたEURO2012 イタリア代表【写真:山田一仁】

【後編はこちらから】

新生アズーリの哲学

──アンドレアの中ではしばらくは思い出したくないことかもしれないんだが……、今回は「大敗」で終ったユーロについて話を聞かせてもらいたい。

「もちろん何だって聞いてくれて構わないよ」

──では、まずはこの質問から。国内外を問わず多くの人が「ピルロなくしてイタリアの決勝進出はなかった」と口を揃える。君もそう思う?

「かどうかは分からないよ。むしろ『そうは思わない』が率直な思いだね。今さら言うまでもないけど、サッカーは絶対に一人ではできないわけで、たとえ誰かひとりが突出した活躍をするとしても、その選手を支える他10人なくしては不可能だからね。決して“いい子ぶって”言ってるんじゃないよ(笑)。あの大会を終えた今だからこそ本当に心の底からそう思っているんだ。なので、仮に僕がある程度のプレーを見せられたとすれば、周りの選手や監督、スタッフ、もちろん控えていた選手を含めた全員のお陰だよ。

 もちろん、決勝は残念な結果に終ったけど、代表の全員が『戦い抜いた』自負と誇りを抱くことができている。大切なのはそれだと思う。何もあの大会だけでサッカーが終わるわけじゃないんだからね。『なぜあんなにも大きな力の差がスペインとの間にあったのか』と自問しながら、といってもその答えはもう既に出ているんだけどね……(笑)。とにかく、ブラジル(2014年W杯)に向けて、これからも努力を重ねて行きたいと思っているところだよ」

プランデッリ監督の持つ柔軟性

──「スペインとの力の差」については後ほど詳しく聞くとして、その大敗の前、およそ8年振りにみた「強いイタリア」に関して話をしよう。まずは、プランデッリの采配。この監督の何が他と比べて違っていたのだろうか。

「それはやっぱり『一貫したサッカー哲学』『柔軟性』。この矛盾するかもしれない二つを彼は実にバランス良く持っているんだよね。だから、2年をかけて作り上げてきたスタイル、これまでの“伝統”に縛られないメンタリティーでの4-3-1-2を絶対的な基本にしながら、『相手が誰であれ、いついかなる状況であっても常に自分たちの側から仕掛けていく』サッカーに必要な戦術と意識を徹底して僕らに説き続けてきたんだ。

 でも、大会直前、長く過酷なシーズンの代償として故障者が続出したけれど、あくまでも攻撃的であろうとする姿勢は一切変えることなく、今回の代表で主力の大半を占めていたユベントスの形(3-5-2)に迷うことなくシフトした。その形を一度も実戦で試すことなく。これは決して簡単なことじゃない。でも監督は、その戦術を機能させる術を知り抜いていたし、なにより、あの策に打って出る勇気があった。もちろん、これがプランデッリという監督の『柔軟性』、その最も象徴的な出来事なんだと思う」

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