フットボールチャンネル

『決定力不足』という言い訳にサヨナラを ~決定力を個人技頼みにしないための戦術的アプローチ~(後編)

text by 清水英斗 photo by Kazuhito Yamada

【図2】ビエルサの判断基準を示すライン
【図2】ビエルサの判断基準を示すライン

 さらに、11-12シーズンからアスレチック・ビルバオを指揮するビエルサの指導も面白い。まずは図を見てほしい(図2参照)。

 ペナルティーエリアとゴールエリアの角を結んだ線。これはビエルサがトレーニング中に引いた線である。これが何を意味するのか? 本人は何も語らないので推測にはなるが、どうやらこれはゴールへの判断基準を示すものらしい。つまり、このラインよりも外側にポジションを取ってしまうと、角度が狭くなってシュートが決まる可能性は著しく下がる。

このラインの内側に沿うようにゴール前へ侵入し、それがボールとのタイミングで外側にポジションがズレた場合は、無理にシュートを打たず、中央への折り返しに切り替える。その判断の基準として、このような線を引いて可視化したのではないかと考えられている。

 リッピの約束事と同様に、判断基準があるおかげで、味方は中央への折り返しを予測して走り込むことができ、ゴールへの厚みも生まれる。決定力を高めるための見事な戦術的アプローチと言えるだろう。

[戦術的アプローチ2]バルサのトリックプレーに見るビッグチャンスの作り方

【図3】バルセロナFKでのトリックパターン
【図3】バルセロナFKでのトリックパターン

 言うまでもなく、セットプレーの構築も決定力を高めるための重要な要素である。日本代表のセットプレーはすでに定評を得ているが、さらにトリックパターンを増やしていく必要はあるだろう。特にグアルディオラ体制になってからのバルセロナは、何度か面白いフリーキックでビッグチャンスを作っているので参考になる(図3参照)。

 キッカーはシュートを打つフリをして壁の横へ下りて来たポストプレー役の味方へパスを出し、ワンタッチで落とす。そして壁の裏へ走り込んだ3人目の味方がシュートを打つというトリックプレーだ。

 シュートを打つ選手がオフサイドにならないように、かつポスト役のマークを混乱させるために、最初に数人の味方がゴール方向へ飛び出すのがポイントである(もっとも、11-12シーズンはすでにバルセロナと対戦するチームがこのパターンを熟知し、通用しなくなっているが)。これも決定力を上げるための工夫と言えるだろう。パターンを挙げ始めるときりがないが、大切なのは、このような工夫を研究する意志である。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top