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Jリーグ 11年前

キーマンが描く20シーズン目の航海図 ~改革の先にある10年後のJリーグとは?~(後編)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

グローバル化を見据えて

 Jリーグのアジア進出については、国内市場がシュリンク(縮小)する前から考えてはいました。

 アジアに出ていく理由はいくつかあって、まず環境適応。Jクラブを支えている責任企業も、主戦場が中国やASEANに移ってきていますよね。僕らもプロサッカーであり、インダストリーですから、競争して日本のサッカーを強くしていくには、環境に適応していかないといけない。責任企業がASEANに出ていくとなれば当然、広告宣伝費が出ていく。彼らに応援してもらえるようになるには、市場を広げざるを得ない。

 それから国内市場。世界のGDPに対して、日本の割合が小さくなっていくと、選手のほうが国外に出ていきますよね。Jのスタート時、選手の輸入国だった日本が、ある時期から供給国に向き始めるようになった。

 現状では、輸入国はみんなUEFAの所属です。供給国は南米。それでは将来、日本はどういう形でサッカー大国になっていくのか。このままいくと、供給国としてFIFAランキングを上げていくことになるかもしれない。

 日本が強くなることが、われわれの目的ですから、ランキングが下がることは考えられない。ランキングを上げながら、この国のサッカーのあり方をどうするのか、ということを考えたときに、国内市場だけで考えると、やっぱり限界があるんですよ。

 先日、タイ・プレミアリーグとの提携が発表されましたが、タイだけではなく、ベトナム、インドネシア、マレーシアには、同じようにアプローチをかけています。なぜASEANの市場かというと、日本が入っていくのに障壁が低いし、人口も大きいからです。

 人口で言えば、インドネシアだけで2億いますからね。この4ヶ国だけで、日本の4倍ありますから。しかも、今後も増えていく。今はまだ「AFCの市場がUEFAに並ぶなんて」って、いぶかしく思うかもしれないけど、世界経済の成長センターは明らかにあそこですよね。で、欧州の経済もおかしくなっている。10年スパンで見るなら、今から手をつけるべきだと。

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