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元伊代表監督ドナドーニがザック解任論を一刀両断「今はチームの成長を待つ時。監督交代など論外」

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

今はチームの成長を待つとき

「チームとは時間をかけて作られて行くものだ。しかもそれが代表となればなおさらのこと。あのスペインでさえW杯優勝は僅かに1度。しかも、それを成し遂げるために数十年もの時を費やしている。フランスはプラティニを擁しても勝てなかった。

 そして、あのオランダに至っては、フランク・ライカールト、ルート・グーリット、マルコ・ファンバステンを擁してもなお勝てなかった。あの3人が一体どれだけ凄い選手たちだったか、彼ら3人のチームメイトだった私が言うのだから間違いない。

ザッケローニ監督
ザッケローニ監督【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 いずれにしても、何度も言うようだが、結果論であれば誰にだって言える。そして、すべての敗因を“戦術”や“采配”に落とし込んでしまうということは、逆説的に言えば、“戦術”や“采配”が完璧であれば“絶対に負けない”ことになってしまう。そんなはずはない。

 プランデッリが言うように、『完璧な“時間帯”はあっても、完璧な戦術はない』ということなのだろう。たった一つのトラップミスで試合を落とすこともある。それがサッカーだ。だからこそ面白い。だからこそ挑む価値がある。

 大切なのは、敗戦に学ぶこと、そして完璧ではなかった時間帯にヒントを得ること。日本が今にして既にスペインと同等のレベルにあるというのなら話は別、確かに3連敗は危機的状況と捉えられるべきなのだろうが、そうではないのだから、今はまだ耐えて凌ぎながら我慢してはチームの成長を待つ時ではないのか。

 さきほど試合の目的は50点を取ることじゃない、つまり勝利することだと述べたんだが(7/3掲載)、その類いの意識というものは、代表レベルでは選手個々が予め備えておくべきことだと言える。

 そもそも、W杯出場権を世界最速で得た代表の監督を今この段階で代えるのはナンセンスも甚だしい。何より、いわゆる“ダモクレスの剣”を、つまりは“解任”という剣を頭上に吊るして仕事を強いるなどは論外であり、むしろそれ以上に有害なことはない。

 そうした状況を(かつて伊代表監督を務めていた当時に)私自身が経験してきたからこそ、その無益を声高に唱えておきたいと思う。

 そして私は、心の底からザックと日本代表の健闘を祈る」

【了】

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