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サッカー業界の暗部の実態。世界一の放映権料で潤うプレミアリーグで働く無給の人々

text by 永田到 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

クラブにとって都合のいい学生

 コベントリー大学でスポーツビジネスを学ぶインドネシア人学生は次のように語る。

「以前まではクラブで働きたいと考えていた。実際に業務で活かせそうなパフォーマンス分析の手法を学ぶべく、土日を活用して別大学のセミナーも受けに行っていた。だが、無給のインターンシップを1年間続けるのは現実的に不可能だ。

 結局クラブで働く事は諦めて、ナイキやアディダスのようなスポンサー企業への就職に方向転換した。卒業論文もスポンサーシップをテーマにしたものに切り替えようと思っている」

 現在プレミアリーグでは、各クラブ向けた若手選手育成ルールの中で、パフォーマンス分析を必須とするよう明文化している。パスやドリブルの方向や、パスの出し手と受け手といった情報を一つずつ手作業で記録・分析していくのは、言うまでもなく地道で骨が折れる。

 直接的な利益が見えづらく淡々としたこの作業を、いきおい誰かに任せてしまいたい、となる。そんな中で「無給でもいいからとにかく働かせて欲しい」と申し出てくる学生は、クラブにとって渡りに船の存在だ。

 報道で取り沙汰されているのは、いずれも経営規模の小さいスモールクラブ。しかし報道には出ていないビッグクラブでも、似たようなことは行われている。

 同一のインターン生を1年間使うのではなく、インターン生を3か月に一度の頻度で入れ替えて、同一業務を引き継がせていく。すると4サイクルまわせば、その業務にかかる年間の人件費はゼロで済むのだ。

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