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アジア 7年前

ベトナム代表、韓国人指揮官に再建託す。国民的人気もタイに惨敗‥岐路に立つ”黄金世代”

text by 宇佐美淳 photo by Getty Images

”東南アジアの五輪”ではいつもの悪癖が出て…

 彼らは、“黄金世代”または、この年代の顔であるグエン・コン・フオンの名前をとって、“コン・フオン世代”と呼ばれるようになり、A代表をもしのぐ人気者となっていった。HAGLのドゥック会長は2014年末、当時いたトップチームの選手の殆どを解雇して“コン・フオン世代”を大量に昇格させるという思い切った決断で周囲を驚かせている。

 若手主体のHAGLは、調子の波が激しく、ここ数年は残留争いを強いられているが、MF井手口正昭(今季途中で退団)やDFフェアー・モービー(元SC相模原)といった助っ人の活躍もあって、年々少しずつ順位を上げ、今季はリーグ中位を狙えるかという位置につけている。

 HAGLアーセナルJMGアカデミー設立の目的は、世界に通用する選手を育成して、海外に選手を送り出すこと。それに加え、ベトナムが未だ成し遂げていないSEA Gamesでの金メダル獲得も大きなミッションであり、会長も選手も、この大会に向けて10年もの時間をかけて準備を進めてきた。

 ドゥック会長は大会前、「金メダルが獲れなければ、ベトナムサッカー連盟(VFF)副会長の任を辞する」とまで言い放っており、この大会に向けた意気込みがいかに強かったかをうかがい知ることができる。

 そうして開幕したSEA Game。ベトナムは、格下の東ティモール、カンボジア、フィリピンに大量得点(4-0、4-1、4-1)で3連勝し、グループ首位に立った。エースのグエン・コン・フオンは4得点の活躍を見せて、攻撃陣をけん引。勝てばベスト4が決まる4戦目では、強敵インドネシアを相手に内容では圧倒。しかし、あと一歩を決めきれずスコアレスドローに終わる。

 筆者を含めた記者たちは試合後、口をそろえて「勝てた試合だった。勝たなければならなかった」と話した。当然、監督も選手も、そう感じていたことだろう。嫌な予感がした。ボール支配率で圧倒しながらも決定力に欠いて、体力と集中力を消耗し、やがて自滅するというのはリーグ戦でHAGLがよく見せるパターンだ。

 ただでさえ、SEA Gamesは中1日の過密日程。出ずっぱりのグエン・コン・フオンは、この試合、明らかにパフォーマンスが落ちていた。そして、グループステージ最終戦はベトナムが最も苦手意識を持つ相手、タイである。

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