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モリエンテスが説くリーガの勢力図【欧州サッカー批評 5】

text by ウーゴ・バジェステル photo by Kazuhito Yamada

モリエンテスが最も影響を受けた監督

――選手として数多くの名監督の下でプレーしています。「どの監督からもポジティブなものを吸収できた」ことは理解していますが、敢えて「最も影響を受けた」と言える監督は誰ですか?

「本当にどの監督からもその時々で最も影響を受けています。ただ、選手というのは一般的にエゴイストですから、自分を最も上手く使ってくれた監督を『いい監督』と言いますよね(笑)。自分の中でまず挙げることのできる監督は、デビューさせてくれたベニート・フローロです。起用される前、彼からは『坊や、あそこにフィールドがある。そこで全てを決めるのはお前だ。オレは監督としてお前にチャンスを与えることしかできない』と言われたことをはっきり覚えています。

 ただ、私の中で最も忘れがたい監督というのは、ディディエ・デシャンです。彼は私の監督である前に親友でした。彼は私に完全なる自由を与えてくれた唯一の監督であり、ロッカールームではチームメイトに『モリエンテスを見本とするように』といつも言ってくれていました。それは本当に光栄なことでした。彼とは未だにコンタクトを取っていますし、非常に優秀な監督です。選手としての実績、経験もあってロッカールームで選手が考えていることを敏感に察知することのできる能力、観察眼を持っています。監督にとって実はその感覚、センスが戦術云々よりも大切なものなのです」

――近年、欧州ではグアルディオラを筆頭にビラス・ボアス、ウナイ・エメリといった若手監督が抜擢され、結果を残しています。今後、彼らに続く若手監督は誰になると予想していますか?

「ルイス・エンリケです。監督としてまだキャリアがないのは理解していますが、彼には選手として十分過ぎるほどの実績と経験があります。指導者ライセンスのコースで一緒になる機会がありましたが、いい監督になるだろうなというオーラを醸し出していました。今はまだローマで苦労していますし、選手と同じで監督としても成功の道をまっすぐ、正しく進むことは難しいことです。しかし、彼にはそれだけのポテンシャルがあると確信しています」

初出:欧州サッカー批評5

プロフィール

フェルナンド・モリエンテス〔Fernando Morientes〕
1993年、アルバセテでデビュー。95年にレアル・サラゴサに移籍し28ゴールをマーク。97年、レアル・マドリードに加入。在籍時、リーガ・エスパニョーラ、UEFA チャンピオンズリーグ(CL)で2 度ずつの優勝など、多くのタイトル獲得に貢献した。03年にはモナコへ移籍し、03-04シーズンのCL 得点王に輝いた。その後、リヴァプール、バレンシアを経て、マルセイユで09-10リーグ・アン優勝を果たし、2010年に現役を引退した。現在、ラジオやテレビで解説者を務める。

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