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連載コラム 11年前

清武、乾、宇佐美は香川を超えられるか?(前編)【フットボールサミット第9回】

text by 清水英斗 photo by ryota harada

逆に清武が優っているのはキック面

 逆に清武が勝っているのはキック面だ。すでに述べた長所の裏返しにもなるが、体を回旋する動きがベースとなる香川は、ボールを蹴る際にも体を回旋させる傾向があり、蹴る力が真っすぐ前方へ伝わらないのであまり強いキックにならない。香川が強烈なミドルシュートを打つ場面がほとんど見られないのは、単純に体のサイズや線の細さといった要因だけでなく、このような彼自身の動きの質にも起因している。

 その点、清武の動きはもう少し直線的であるため、キック時にスムーズな力がボールに伝わりやすい。クラブでも日本代表でも、香川がプレースキッカーを務めることはほとんどないが、清武はクラブのセットプレーにおけるほぼすべてのキッカーを任されており、その精度の高さは長身選手を数多くそろえるニュルンベルクの欠かせない武器になっている。

 また、日本代表戦でも、9月11日に行われたイラク戦では後半に左サイドから本田圭佑への絶妙なクロスを供給している。このようなキック系のプレーに関しては、清武は香川以上のパフォーマンスを発揮できる選手だ。ワンタッチプレーの精度も高い。

 同じコンビネーションプレーを得意とする2人だが、動きの質、長所は少し異なる。ニュルンベルクの全体的な技術のつたなさは、清武のコンビネーション上の特長をなかなか引き出してくれない。しかしその一方、セットプレー時には背の高い選手をずらりと並べ、清武のキック精度を生かすメンバーがそろっている。相性としては良し悪しというところか。

 とはいえ、ボールを持てず、セットプレーで点を取るというのはまさしく弱者のサッカーであり、ニュルンベルクが残留争いに巻き込まれる可能性は決して低くはない。清武がよりキープ力を高めて日本代表の本田のようにタメをつくるプレーを行うか、あるいは周囲の選手がドルトムントのような素早いサポートを目指して解決していくか。劇的な改善は難しいかもしれないが、清武とニュルンベルクがシーズンを通してどのような成長を果たすのかを見守りたい。

【後編に続く】

初出:フットボールサミット第9回

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