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Jリーグ 11年前

ガンバ大阪のチームメートが体感する、背番号7の進化(後編)

text by 下薗昌記 photo by Kenzaburo Matsuoka

「気持ちも乗っている時は後ろから見ていて分かるんです。ボールの欲しがり方が半端じゃない」(中澤)

「セレッソとのダービー(2011年3月5日J1第1節)ではヤットさんはニアにシュートを決めたんですけど、あれは難しい。それに僕が一番印象に残っているのは去年のアウェイ柏戦(6月22日J1第17節)。2人ぐらいかわしてシュートを決めましたけど、後ろから見ててもエグかった(笑)。ペナの中であんなに落ち着ける人なんて、他にいない。

 ボール扱いや体の使い方が上手いのは当然必要だけど、メンタルが強いんでしょうね。上手くても、そこが伴わない選手はたくさんいるし、ヤットさんは、ミスをしても次のプレーに支障なく入れるメンタルも強み。根性や負けん気もありますし、味方が試合中にやられたら、やりかえす場面もしょっちゅう、見られるので(笑)。ヤットさんもガッツリ削りに行ってますから。そういう気持ちも内側に秘めている人だと思います」(中澤)

 ACLのアウェイ、浦和レッズ戦やCWCのマンチェスター・ユナイテッド戦などガンバ大阪のクラブ史に残る大一番で、常にピッチに立ってきた中澤は、技巧派が揃うチームにあって数少ないファイター系の選手。それだけに、遠藤に求める要素も独特だ。

「僕は、ヤットさんに対して、熱い気持ちを求めるのではなく、ピッチでは常に落ち着きをもらっているんです。ヤットさんがハードにやってるから『オレも頑張ろう』じゃなく、試合を落ち着かせてくれるし、どんな時でもマイペースで淡々としている。そういう余裕のある姿を見て僕自身も落ち着ける」

 羅針盤のように、その存在を頼りにし、ピッチ内でも後方からそのプレーを見続けている観察眼の高い中澤だからこそ、遠藤の調子のバロメーターを判断する2つのプレーがあるという。

 1つ目は、遠藤の持ち味でもあるボールタッチの回数だ。

「ヤットさんが神がかっている時は、マジで凄いっすよ。名古屋相手の天皇杯の決勝(2009年)だったり、ACLの決勝戦とかアウェイの浦和戦。舞台がデカければデカいほど勝負強さを発揮しますよね。好調で気持ちも乗っている時は後ろから見ていて分かるんです。そういう試合は、ボールの欲しがり方が半端じゃない。僕が最後尾でボールを持つと、『くれっ』ていうポジショニングが素晴らしいし、ボールを当てやすいところにいる。言葉には出さなくても、調子がいい時は明らかに欲しがってますからね(笑)」

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