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Jリーグ 11年前

ガンバ大阪・遠藤保仁の「戦術眼」(前編)

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

ボールを“ちゃんと”止められるから、良いキックが生まれる

 キックのほとんどはインサイドで行われる。インサイドキックこそキックの王様なのだが、これが人によって微妙な違いがある。インステップキックほどの差はないにしても、蹴り方は微妙に違っているものだ。

 これは体格や体型、筋力などに個人差があり、それ以上に本人の慣れの問題が大きいので、どれが正解という答えもない。カカトに近い部分で蹴る人もいれば、アーチになっている部分でとらえる人もいる。足の振り方もいろいろ。必然的にボールの置き場所も違ってくる。

 自分が最も正確に蹴れる場所、極端にいえば目をつむっても蹴れる場所を知っていなければならない。そのうえで、違う種類のキックを使えて、置き所がずれても調整する技術が必須になるわけだが、まずはベストの置き所がそれぞれの選手にある。“そこ”に一発で止めることが、“ちゃんと止める”の基本だ。

 ちゃんと止めて・蹴る。ここがしっかりしていないと、まともに作動しない車に乗るようなもので、運転技術以前の話になる。

 技術的に遠藤が傑出しているのは、まさに止める・蹴るの部分だ。ユース代表のころには、すでに正確でスピードのあるインサイドキックに定評があった。近いレンジでの止める・蹴るでは、「あまりボールは見ない」と言う。“コロコロPK”として話題にもなった11メートルからのキックでも、GKを注視していてボールは見ていない。DFからショートパスを預かるときでも、「感覚で止められる」そうだ。

 逆回転をかけたロングパスや、ピシャリと足下へつけるクサビのパスなど、遠藤は緩急自在のキックを使い分けているが、ベースになっているのは最も単純な止める・蹴るに関する自信だ。ボールから自由になっている。その前提があって、最大の特徴である判断力が生きてくる。

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