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Jリーグ 11年前

ガンバ大阪・遠藤保仁の「戦術眼」(前編)

text by 西部謙司 photo by Kenzaburo Matsuoka

遠藤は若い頃から「責任の取れる」選手だった

 賢くプレーする、良い判断をするには、情報を集めること。子供のころから、より多くの情報を取り込む癖を持っていれば、自然と判断も研ぎ澄まされていく。ここには持って生まれた才能も関与するが、情報処理能力は使えば使うほど上がっていくものなのだ。

 プロ契約をするころになると、このタイプの選手たちの集積回路はすっかり出来上がっている。情報を入れれば入れるほど、より精度の高いアンサーが自動的にアウトプットされる状態になっている。横浜フリューゲルスの監督だったカルレス・レシャックは、18歳の遠藤保仁について、「責任をとれる選手だった」と、振り返っていた。

 レシャックの言う「責任をとる」とは、積極的にボールを受けにいき、局面を解決しようとする行動を指す。デビューしたての若者が、局面に踏み込んで解決を図っていた。難しい局面に尻込みする日本人選手も多い中、平気で介入に動けたのは、遠藤が解答を知っていたからだろう。他の選手には処理できない情報でも、遠藤にはさほど難しくなかったのだと思う。

 レシャックは若い遠藤を見て、必ず将来はチームを動かす中心的な選手になると考えていたそうだ。

 ピッチ上のメンバー11人は、全員が同じ資質を持っているわけではない。むしろ、全員が遠藤でも上手くいかないわけで、いろいろな資質を持った選手で構成されている。ただ、その中でプレーの中心になる選手は自ずと決まる。答えを出せる選手だ。

 他のメンバーがどうしていいかわからないときでも、その選手にボールを預けておけば何らかの解決をしてくれる、他の選手には出せない解答を示せる、そういうプレーヤーに自然とボールは集まり、そこからの配球でチームが動くことになる。だから、チームは特定の選手のリズムで動く。バルセロナは、迷ったらチャビに預ければいい。日本代表やガンバ大阪では、遠藤がそうした役割を担っている。

【後編に続く】

初出:フットボールサミット第6回

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