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Jリーグ 11年前

柏レイソルは、なぜ天皇杯で優勝することができたのか?

text by 後藤勝 photo by Kenzaburo Matsuoka

レイソル・イレブンが語るACLへの執念

 天皇杯準優勝を、成果なしと言うつもりはない。しかし勝ってさえいればACLに出場でき、J2にいながらにしてモチベーションを高め、クラブとしても選手としてもいい経験ができる機会を失ったのだから、勝つと負けるとでは、ガンバにとって差が大きい。今オフの移籍動向にも影響するだろう。

 ガンバをくさすことになってしまうかもしれないが、やはり優勝チームと準優勝チームには大きな開きがあると言わざるを得ない。カテゴリーの異なる大会の話で恐縮だが、インカレの決勝に進出した早稲田大学のフォワード富山貴光は「ファイナリストになっただけでは意味がない」と言っている。どの大会でもそれは同じだろう。

 勢いで天皇杯決勝、元日国立まではやってこられても、下位チームが勝つのは至難の業だ。1994年の天皇杯ではひと足先にJリーグに加盟していたベルマーレ平塚が当時、旧JFLのセレッソ大阪を決勝で下したし、昨年の天皇杯でも、J2で後半戦に巻き返したものの最終順位は7位だった京都サンガF.C.は、J2優勝をもって1年でJ1に再昇格するFC東京に完敗した。

 序盤こそ不調だったが夏ごろから自分たちのスタイルを取り戻し、シーズンのトータルでは高いパフォーマンスを発揮して一定の水準を保った柏が、不調つづきでJ2降格を決めたガンバに勝ったこの結果は順当なものだ。

 ガンバも降格の悔しさを晴らし、来季J2で暮らす一年の励みにすべくACL出場権獲得を目指して奮闘したが、柏の切迫感はより強烈だった。

 リーグ戦では3位の浦和レッズにわずか勝ち点3差、2位のベガルタ仙台にも勝ち点5差の6位でフィニッシュし、ACL出場権争いでは涙を呑んだ。昨季のJ1優勝でFIFAクラブワールドカップに出場し、サントスと1-3の熱戦の末に敗れた。今季のACLでは、自分たちを下した蔚山現代が優勝した。蔚山に勝っていれば栄冠を掴めたかもしれない。そして南米や欧州の強豪と、ひりひりするような戦いができるかもしれない。アジアと世界を渇望する気持ちは、おそらく柏のほうが強かった。

 準決勝でタイムアップの笛が鳴ると、柏のゴール裏はすぐさま「A・C・L! A・C・L!」と連呼した。それは決勝の試合前も、試合後もそうだった。ファン、サポーターまでを含め、クラブ全体がACLを欲していた。加えて、2009年の決勝でガンバに敗れた借りを返そうという気持ちもあった。

 なにより、ひたむきで、仲間思いであり、まとまりがあった。決勝の柏ベンチには、負傷などでこの試合に出場できない選手のユニフォームが吊るしてあった。このユニフォームのことを殊勲の渡部に問うと、彼は声のトーンを強めてこう答えた。

「準決でもそうでしたけど、人数が少なく、けが人も多いなかで、逆境を乗り越えられる。こういうときだからこそチームが1つになろうと、監督はじめ、みんなが口に出して言っていた。そういったことが、今日につながったと思います」

 渡部のゴールをアシストしたジョルジ・ワグネルも口を揃える。

「ファイナルまで行くには全員の力が必要だった。全員が勝利に対する魂を強く持っていたこと、みんなが同じ目標に向かって肩を組み、手を取り合ってがんばってきました。1試合1試合が、みんなで必死に戦った結果です」

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