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Jリーグ 11年前

柏レイソルは、なぜ天皇杯で優勝することができたのか?

第92回天皇杯全日本サッカー選手権大会は、決勝戦でガンバ大阪を1-0で下した柏レイソルが優勝を飾った。柏は前身の日立製作所時代以来、三回目の優勝となり、Jクラブ化後は初の快挙だ。出場停止や負傷離脱でメンバーの揃わなかった柏の天皇杯での戦いだが、彼らが優勝できた要因はどこにあったのか?

text by 後藤勝 photo by Kenzaburo Matsuoka

柏レイソルが37年ぶりの優勝

 第92回天皇杯全日本サッカー選手権大会は元日、国立競技場にて決勝が行われ、ガンバ大阪を0-1で破った柏レイソルの優勝で幕を閉じた。前身の日立製作所時代を(1972年、1975年)を含めると柏の優勝は三回目。Jクラブ化以後では初の快挙だ。これによって柏は次回ACL(AFCチャンピオンズリーグ)2013への出場権を獲得した。

 柏はグループHに入り、セントラルコースト・マリナーズ(オーストラリア)、貴州人和(中国)、水原三星ブルーウィングス(韓国)とグループ突破をかけて戦う。開幕戦は2月27日のアウエー対貴州戦の予定。

 また柏は、2月23日に国立競技場にて開催されるリーグチャンピオン、サンフレッチェ広島とのスーパーカップ、FUJI XEROX SUPER CUP 2013にも出場が決定。スーパーカップ、ACL、J1と続く連戦が2月末から3月頭にかけて、柏を待ち受ける。

 なお、ガンバ大阪は松波正信監督の退任と「ガンバサダー(ガンバ大阪のアンバサダー)」就任、長谷川健太新監督の就任を発表した。新監督就任会見は1月中旬に大阪で行うという。

主力が復帰した両チームの布陣は?

 ホーム扱いながら右側にエンドをとりキックオフをしたガンバは、今野泰幸が明神智和とドイスボランチを組み、遠藤保仁がトップ下、レアンドロが1トップを務めるシステム。準決勝ではレアンドロが出場停止で家長昭博が1トップだったためにゼロトップのような感じになっていたが、フォーメーションそのものはこの大会を通じて変わっていない、ガンバ天皇杯ヴァージョンだ。

レアンドロと明神(故障明け)の復帰が心強い一方、センターバックの中澤聡太を負傷で欠いたのは不安材料。今野を下げて穴埋めすることはせず、丹羽大輝を起用することでディフェンスラインを整えた。

 対する柏は準決勝でセンターバック不動のレギュラー近藤直也が負傷、同じく準決勝で決勝ゴールをマークした工藤壮人が警告を受けて出場停止となり、主力2人を欠く事態。近藤の代わりを務めたのは185cmと、この日両チームを通じてフィールドプレーヤーでは最長身のセンターバック渡部博文。期限付き移籍先の栃木SCでは何度かヘディングでのゴールを決めており、空中戦に期待がかかる。


出場停止から復帰して勝利に貢献した茨田陽生【写真:松岡健三郎】

 前線は構成が変わった。ここまで工藤壮人、澤昌克、田中順也の3人のうちのいずれかで2トップを組んでいたが、この日は澤の1トップ。中盤でレアンドロ・ドミンゲスと茨田陽生が出場停止から復帰し、前節も先発していたジョルジ・ワグネル、水野晃樹、大谷秀和はそのままに中盤から前を構成した。またサイドバック橋本和も出場停止明けで、前節に左サイドバックを務めた山中亮輔に代わって先発した。

 ラウンド16に入ってから4回戦の対横河武蔵野FC戦、準々決勝の対大宮アルディージャ戦と、立ち上がりに苦労していた柏は、準決勝の対横浜F・マリノス戦では、キックオフから全開でプレッシングをするハードワークで調子を取り戻した。

 対横浜FM戦前半最初の20分間は前がかりになり、出足の速い、激しいプレスで相手の攻撃を封じ、攻めては右サイドバックに入った那須大亮の大胆なオーバーラップを利してサイドから崩していった。結果、その時間帯に先制点を奪うことができ、その後も最後まで積極的なディフェンスの姿勢を崩さずに、攻撃的で果敢な守備を貫いて、中村俊輔をトップ下に抱く横浜FMという強敵を下した。

 準決勝にボランチで先発した栗澤僚一は試合後「この守備を徹底できれば次の試合も攻撃のチャンスが出てくる」と言ったが、そうは問屋が卸さなかった。

 ガンバを相手にしても前線からプレッシャーをかけて攻撃を押さえ込みたい柏だったが、その思いとは裏腹に押し込まれてしまう。

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