フットボールチャンネル

日本代表 11年前

ラトビア戦メンバー選考から見えるザック・ジャパンの未来像

text by 河治良幸 photo by Kenzaburo Matsuoka

大津招集に見えるザックのスタイル

 15人が選出された海外組でも唯一、初選出となった大津に関してザッケローニ監督は、五輪の活躍などから「以前も呼びたいと思ったことはあった」と語ったが、彼の本職である2列目は“多くの才能ある選手がおり、もっとも競争の激しいポジション”と指揮官も認める。

 ザック・ジャパンの立ち上げ当初から主力を担う本田圭佑、香川真司、岡崎慎司に加え清武弘嗣が定着し、所属クラブのフランクフルトで好調の乾貴士も代表で力を発揮しつつある。また宮市亮(ウィガン)や宇佐美をはじめ、今回は選ばれなかった有力候補も国内外におり、3月のカナダ戦、ヨルダン戦では他の選手が呼ばれる可能性は十分にある。

 ただし、大津の強みは攻撃的なポジションなら、どこでもこなせることだ。ロンドン五輪では1トップも担い、その時は“ゼロ・トップ”とも言われたが、ザック・ジャパンでもここ最近では本田がしばしば1トップを任され、時間帯によっては香川がポジションを上げるなど、本職を置くという“聖域”は崩れてきている。

 本田がここでテストされるまで、本職のセンターフォワードはほぼ一貫して3人選ばれてきたが、今回も前田とハーフナー・マイクのみ。仮に大津がA代表レベルでも、本田と似た様な役割をこなせるとザッケローニ監督が判断するなら、さらに“セカンドトップ枠”が増えるかもしれない。

 もちろんザッケローニ監督はイタリアのクラブを率いていた時代と同じく、ウディネーゼ時代のオリバー・ビアホフ(元ドイツ代表)の様な、どっしりと相手のセンターバックを背負えるFWを前線に置きたいはずだが、就任会見で示唆していた“センターフォワードとセンターバックは薄い”という問題はそのまま残っている。

豊田や森島が今後招集されることはあるのか?

 その中で前田が主力として一定の信頼を勝ち取り、アジアカップで李忠成(サウサンプトン)、3次予選からハーフナー・マイク(フィテッセ)が加わってきたが、ゴール前でクロスに合わせる能力などはともかく、プレッシャーの厳しいエリアでボールがおさまり、攻撃に厚みをもたらせる選手となると、一番手が本田になってしまうのが現状だ。

 そうした状況を踏まえてザッケローニ監督が今後、豊田陽平(サガン鳥栖)や森島康仁(大分トリニータ)、あるいは指宿洋史(KASオイペン)の様な、代表レベルで未知のポテンシャルを秘めた本職のセンターフォワードを積極的にテストしていくのか、それともセカンドトップを前線にも流用して、俗に言う“ゼロ・トップ”の志向を強めて行くのか。

 今回のラトビア戦、3月のカナダ戦、そしてヨルダン戦と最終予選の突破を最重要課題とした選考&強化になっていくのは間違いないが、そうした中でザッケローニ監督がどういうコンセプトでその後のテストに向かって行くのかを見極める機会でもあるのだ。

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top