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[インタビュー]石川直宏 ~『変化、そして進化』常勝軍団になるための決意表明~

text by 後藤勝 photo by Kenzaburo Matsuoka

良さを出しつつより厳しく

──サリ(浅利悟)さんが入った97年のときも周囲が温かくて溶け込みやすいチームだったようです。

「ぼくもそうでしたね。知っている選手は正直なところあまりいませんでした。唯一、話をしたのが茂庭(照幸)とか星(大輔)くんかな、その当時は。選手の顔と名前も一致しないなかでプレーしていたんですけど、周りは自由にやれ、という感じで迎えてくれました。監督も、もちろんそのつもりでいてくれて。選手だけでなくスタッフも。記者の方も言いますもんね、この小平の雰囲気がまったりしている(笑)と。それが難しいところなんですけどね。いいところでもあり、これから話すことにもつながると思うんですけれど」

──ここにいたくなるクラブとしての魅力なんでしょうか?

「ぼくが2002年に来て衝撃的だったのは、マリノスと対照的なクラブだったこと。どちらがいいとか悪いというのではなく、自分がどちらに向いているか、プロとしてやっていくうえでやりやすいのはどちらなのか。選手が移籍や契約満了で外に出るじゃないですか、でも結局は東京がいいという選手がほぼ大半なんですよ。サッカーの内容もそうだとは思うんですけど、いちばんは温かい雰囲気ですね」

──マリノスの雰囲気はどんな感じだったんですか。

「たぶん、いまと全然ちがうと思います。ぼくが入った2000年は──まあ、98年や99年もサテライトに出させてもらったりしていましたけれど、それが悪いということではないんですが、当時のぼくらのようなユースの選手が行くような場所ではなかったです」

──ビッグクラブのような?

「はい。ある意味プロと同じように接してくれる。マツくん(松田直樹)は『ユースとは、いっしょにやってらんねぇよ』と言っていました(笑)。いまはなかなかそんな人いないじゃないですか。マツくんも若かったというのもあるんですけど、言われた僕たちは萎縮しちゃう。そういう人ばかりじゃないんですけど、東京よりさばさばしているというか、よりプロっぽい。ウチが優勝をめざす常勝軍団にならなければいけないとすると、変えなければいけないのはそこかもしれないですね。

 ただ、いまの自分たちのよさを残しつつ、より厳しくという方向には、ぼくが入った当初からは雰囲気が変わってきていると思います。ぼくがずっと思っているのは、昔のマリノスのようにふだんはドライにやっている人たちが、試合になったらうまくやれるというチームよりも、ぼくらのようにふだんからコミュニケーションをとっている集団が、ピッチでは厳しくやるほうが伸びしろがあるな、ということ。ちょっとずつの変化ですけれど、いま自分が求めているものはここにあるのかな、と思うんです」

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