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なぜクリロナのドリブルにはキレがあり、メッシのドリブルは止められないのか?(後編)

『体の動きから読み解く、最先端の個人戦術と技術』
アスリートの体の使い方を研究し、読売巨人軍の長野久義など一流選手へのへの指導を行う吉澤雅之氏。スポーツにおける「身のこなし」のプロに話を聞き、クリロナ、メッシ、香川真司、エジルを中心に最先端の個人戦術を分析する。

text by 清水英斗 photo by Kazuhito Yamada

【前編はこちらから】 | 【欧州サッカー批評6】掲載

股関節による旋回をうまく使うことができる香川


股関節の使い方が特徴的な香川【写真:山田一仁】

 香川もメッシと同じく柔性の選手だが、特に彼が特徴的なのは股関節の使い方であると吉澤氏は説明する。

「香川はアウトサイドでタッチして抜くとき、あるいは切り返すときなど、股関節を使って少しガニ股になるような感じで足を外旋(外側に回すこと)をして進んでいる。四股を踏むような格好。これによって横方向への回旋力が上がり、真横への移動がものすごく速くなる」

 この香川の回旋力が最も現れているのが、ボールを止めながら反転するファーストタッチのシーンだ。

「(自陣方向からの縦パスを受けるとき)香川は少しがに股になるような姿勢で、ボールをトラップしながら体を回旋させ、そのまま前を向く。イメージとしてはボールを巻き込みながら、ボールと体が一緒にターンをする感じ。香川のターンは股関節による回旋をうまく使うことでスムーズにできている」


四股を踏むようにガニ股で進むため横移動が速い香川。股関節の旋回をうまく使い、ボールを巻き込みながら体と一緒にターンすることができる。

 このような香川の回旋能力は、密集地帯の中で大きな威力を発揮する。ペナルティーエリア内に人がたくさんいる中で、スルスルと抜けて行くプレーはこのような動きの特長がよく生きている。

 一方、香川の体の使い方のデメリットとしては強いキックをしづらいことだ。

「香川は剛性ではないので、ミドルシュートがあまり強くない。例えば本田のような重さのある選手の場合、ボクシングなどで体重を乗せてパンチをするのと同様に、ボールに対して体を沈み込ませる落下エネルギーをボールにぶつけることで、強烈なシュートを打っている。しかし、香川にはその重さがなく、しかも柔らかい体の横回転で力を受け流してしまうので、強いボールが打てない」

 どの選手にも言えることだが、メリットとデメリットは紙一重である。今シーズン、香川がマンチェスター・ユナイテッドで成功するためには、このような彼の動きの特徴を生かせるか否かが重要なポイントだろう。

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