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日本代表 11年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その3・岡田監督の試みと挫折)

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

より真剣に「日本化」に取り組んだ岡田監督のチーム作り

「日本人らしいサッカー」とは何か?
【写真:山田一仁】

 岡田監督のチーム作りは、オシム前監督が掲げた「日本化」というキーワードにより真剣に取り組んでいたように思えた。実は、オシム監督の「日本化」が本当に日本化なのか、それともオシム化なのかわからないところがあった。

 しかし、岡田監督の日本化は、“オレ流でやる”という言葉とは裏腹に、岡田流の要素はあまり見あたらず、ただ日本選手の特徴を生かし切ろうとしているように見えた。横浜F・マリノスなどの監督時代に見せた戦術と、日本代表のそれにもあまり共通点がない。

 日本代表はW杯アジア予選を勝ち抜き、いくつかの親善試合を消化しながらワールドカップ・イヤーを迎える。岡田監督は「接近・展開・連続」、「インナーゾーン」、「ニアゾーン」、「低いクロス」など、いくつかのキーワードを交えながら直面する課題に取り組んでいた。ボールは運べる、しかし引かれたときにどうやって崩し点をとるか、アジアカップで解決できなかったテーマに具体策をあげて取り組み、あるときは効果が上がったかに見えて、すぐに元に戻るといった一進一退を繰り返してきた。

 ところが、2010年に入って状況は一変してしまう。

 毎年、1月、2月の日本代表はあまりいいコンディションではない。Jリーグ開幕前の時期であり、試合勘も体のキレも十分ではない。案の定、日本代表の出来は良くなかった。東アジア選手権では中国に引き分け、韓国に敗れてしまう。続くバーレーンとのアジアカップ予選(といっても消化試合)に勝利するが、内容的にはほとんど進歩がなかった。本田圭佑と松井大輔が代表で初めて本来のプレーを見せたのが収穫だったが、カウンターを食らうと相変わらずの守備の脆さを垣間見せていた。

 セルビアとの親善試合は、相手が即席のリーグ選抜で、いわばセルビア代表の3軍レベルだったにもかかわらず完敗してしまう。引かれたら崩せない、カウンターに脆いという2大欠点も改善されるどころか悪化していた。そして、W杯緒戦の3週間前に行われた国内最後の壮行試合では韓国に惨敗。この試合では引かれたら崩せないどころか、日本の戦術の前提である、パスをつないでボールを安定的に敵陣へ運ぶことさえできなかった。岡田監督の「日本化」は、この時点で水泡に帰したといえる。

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