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日本代表 11年前

「日本人らしいサッカー」とは何か?(その3・岡田監督の試みと挫折)

オシム、岡田武史が目指した日本人らしいサッカーの先に何が見えたのか? そもそも日本人らしいサッカーとは何なのか? 今改めて問いたい。我々はどんなサッカーを求め、何を目指すのか、と。

text by 西部謙司 photo by Kazuhito Yamada

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「日本人らしさ」の追求〔2〕岡田監督の試みと挫折

 アジアカップで「日本らしいサッカー」を実現させたオシム監督だったが、もちろんそれで満足していたわけではない。4位という成績は、結果としては失敗した大会だった。

 ただ、ボールを支配して相手陣内まで確実に運ぶというベースの部分は出来上がっていた。取り組むべき課題も明確だった。アイデアとテクニック、スピード、パワーを駆使して、いかに得点を増やすか。カウンターアタックへの対処をどうするか。さらに、ボールポゼッションで優位に立てない強豪国と対したときにどうするか。

 しかし、オシム監督が脳梗塞で倒れ、課題は岡田武史監督に引き継がれることになった。

 オシムの仕事を引き継ぐといっても、違う監督が指揮を執るのだから、まったく同じにはならない。それまでの実績を見るかぎり、岡田監督とオシム監督では共通点よりもむしろ相違点のほうが目立つぐらいだった。オシム流を引き継ぐという点では、ミスキャストだったと思う。

 ただ、アジアカップで一度作り上げたチームがあり、多くの選手もそのまま残していた。監督が代わったからといって、急に何もかもが変わる状態でもなかった。岡田監督が自分の色を出し始めたのは、3次予選のバーレーン戦(アウェイ)に敗れた後からだ。

 起用する選手とポジションをマイナーチェンジしている。フォーメーションは4-2-3-1か4-4-2で変わらない。だが、オシム監督時にはトップ下かサイドに起用されていた遠藤保仁は長谷部誠とのコンビで2ボランチに定着させた。トップ下と左サイドには、よりFW的な選手が起用された。

 中村憲剛が1トップ下にポジションを1つ上げて使われているほかは、玉田圭司、大久保嘉人、田中達也、岡崎慎司などFWタイプが、2つか3つのポジションを占めるようになった。「水を運ぶ人」の専用ポジションもなくなった。右サイドバックには攻撃力のある内田篤人を抜擢した。全体的にアジアカップ時よりも攻撃的な人選にシフトしたといえる。

 ただ、プレースタイルに大きな変化はなかった。日本はボールを保持して相手陣内まで運んでいる。そこで攻めあぐむ傾向も変わらず、カウンターで時折危ない場面が見られるところも同じなら、得点源がセットプレーというのも変わらなかった。その意味では、岡田監督は前任者のチームをそのまま引き継いだといえるかもしれない。

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