現状維持という選択の失敗
第2レグのバルサは、まるで「バルサを目指しているチーム」のようだった。ボランチがリスクを負ってプレスに加勢していく、これはバルサになれるかどうかの分かれ目の1つなのだが、バルサはバルサであることに失敗していたと言える。ブスケツはそれだけ代えの効かない存在なのだ。
だが、ブスケツがプレーした第1レグでもプレスは機能していなかった。実はリーグ戦でも、バルサはたびたびバルサであることに失敗している。ブスケツが戻ればプレスは回復する? メンバーが揃えば元のレベルに戻るというビラノバ監督の談話を鵜呑みにできない理由がここにある。
開幕当初、筆者はバルサのピークは今季いっぱい続くと予想していた。事実、リーグ戦の優勝は時間の問題だ。ビラノバ監督の方針は変化よりも維持に傾いていた。平たく言えばグアルディオラ前監督のときよりも“緩め”。
そのかわり安定感はある。ぎりぎりと絞り上げてきたチームを少し緩めたとき、より多くの果実を手にするという例はわりとよくあることで、今季のバルサはそうなるだろうと予想していた。
誤算は監督の病気療養による離脱。監督交代でなく代理を立てたクラブの方針は、現場での必要な判断を遅らせてしまう。現状維持が基本路線とはいえ、チームは“生き物”だ。常に手入れをしなければ問題が大きくなってしまう。勝負の世界で現状維持は後退を意味するのだが、そのスピードが早まってしまったかもしれない。
チームにはサイクルがある。強いチームほど強力な選手に依存しているので、その選手たちが衰えればチームは衰退する。強力であるがゆえに世代交代も進まないのが通例だ。バルサも例外ではなく、チャビ、イニエスタ、メッシ、ブスケツ、プジョルの代役を探すのは容易ではない。
【次ページ】バルサは完璧を維持しなくてはならない