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時代の終焉か? “バルサであること”に失敗したチームの未来

text by 西部謙司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

バルサは完璧を維持しなくてはならない

 精神的な問題もある。スペインではサイクルは長くて3年と言われているそうだ。張り詰めたテンションを維持するのが難しく、グアルディオラがバルサを退任した理由も疲労だった。

 ビラノバ監督の現状維持路線はサイクルの先延ばし、延命措置なのだが、改革を断行するようなタイミングでもなかった。だが、メンバーや戦術の固定化は、肝心なときに故障者が続出し、バックアップが手薄になったことと無関係ではないだろう。

 バルサはもともと偏りのあるチームだ。引いて守って持ちこたえられる強さはないし、CKを7、8本蹴られたら高さで負けて失点する危険も大きい。メッシがいなければ引いた相手を崩して点をとれるかどうかも怪しい。

 勝利の方程式が成立していれば確かに強力ではあるが、何か1つの要素が欠けると力が落ちる。つまり、このチームを維持するには非常に高いテンションを保つ必要があるのだが、それが難しくなっているのかもしれない。

 ミラン戦の第1レグで敗れたときは、バルサ自身の問題が大きかった。このときはサイクルの終焉ではこうなるという姿をさらしてしまった。バイエルン戦の連敗も点差がついたのはバルサ自身の問題だが、バルサが完調だったとしてもバイエルンに勝てたかどうかはわからない。

 ここで示してしまった終焉の姿は一時的なものである一方で、断続的に今後も繰り返される可能性は残っている。完璧なバルサを維持できなくなったとき、完璧でなければ勝てないチームはバイエルンだけではないからだ。

 当然、終わりはすでに始まっていて、それがいつかはわからないにしても、悲観的に見ればそう遠くないかもしれないと危惧を抱かせる2試合ではあった。

【了】

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