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「余命5年」 “ 死”に近づくリーガ・エスパニョーラ

text by 小澤一郎 photo by Ichiro Ozawa

不況でも高級車に乗れる選手

――スペイン政府は長年、サッカークラブに特別な取り計らいをしてきたということですね?

「はい。なぜなら、もし政府がサッカークラブやサッカーに対して強気の行動に出れば、市民であるファンが抗議行動に出るからです。スペインの政治家は、そもそも何の解決もできない存在なのですが、解決のための取り組みがなされないテーマの一つがサッカーなのです。

 なぜなら、政治家に恐怖心を与えるほど社会的に大きな影響力を持つものだからです」

――マラガが中東のオーナーにより買収されたクラブとなりましたが、スペインではそういうクラブも増えるのでしょうか?

「マラガは今季開幕前に身売りの話が出るなど良くない状況ですし、ヘタフェやラシン・サンタンデールのケースも大失敗でした。ただ、スペインサッカー界のクラブは論理的に安いと考えます。プレミアのクラブの買収額は今や天文学的高値となっていて、富豪たちは別の場所を探し、フランスなどのリーグに行っています。

 プレミア以外では、少し強いチームを作ればリーグ優勝できるし、チャンピオンリーグに出場できる。具体的にはPSGがいい例です。スペインは、代表が世界王者、欧州王者であり、リーグは世界中から評価されていますから、今後富豪や投資家たちはスペインにやってくるでしょう」

――こうした状況下で選手は依然として高額の年俸を受け取っています。

「クラブが事実上破産し、返済不履行な状況となっている時に、選手たちはポルシェやフェラーリで練習場に出勤してきます。彼らは危機に瀕する会社の労働者でありながら、事の深刻さを理解していません。

 私は、サッカー界が強い姿勢を持って高額なサラリーに歯止めをかける必要があると考えています。社会では、公務員の給料がカットされており、民間企業でも大幅なリストラが断行されています。1部クラブの財務内容を見た時、人件費の高さに驚かされることがありますし、少なくないクラブが収入の100%を超える人件費となっています。

 人件費だけで収入以上の額となっている場合、これは破産状態にあると言うことができます。2部に関して言うならば、アマチュアの経営形態を導入する必要もあるでしょう」

――スペインのクラブの中でトップサラリー制度を採用しているクラブはありますか?

「トップサラリー制を導入しているクラブはありますが、選手はその原因を理解していませんので、私は選手のマネージャーやエージェントと話す必要があると思います。選手というのはクラブのバランスシートを見て、そうした高額の年俸を支払う能力がないとわかっている時でも、それは他人事だと考えています。

 最初にその契約を約束したクラブに責任がある一方で、選手にも責任はあります。多くの選手たちは自分たちのことを天の上に暮らす神のように思っています。よって、現実で起こっていることに無知な人間となってしまうのです。

 選手と話ができる近い人間が、選手に厳しい現実、『サッカー界も一般社会とつながっている』ことを伝える必要があります」

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