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日本代表 11年前

日本代表チームメートが語る本田という存在(前偏)

text by 元川悦子 photo by Asuka Kudo

北京世代に見る成長とチームとしての成功

 栗原は本田を名古屋グランパス時代から知っており、対戦経験もある。「当時はFKがすごいってくらいで、そこまで印象がなかった」と言うくらい、ごく普通の選手だと位置づけていた。そういう選手が南アワールドカップを境に爆発的成長を遂げたのだから驚きを感じないはずがない。

 同じチームの先輩である中村俊輔が直前でリザーブメンバーにまわり、キャプテンが中澤佑二から長谷部誠(ヴォルフスブルク)に代わるなど、その動向を日本から見つめていた栗原にとっても、本田の劇的な変化は興味深かったようだ。

「本田はデカいことを言う傾向があるよね。日本人ってそういうタイプを嫌うし、調子に乗っているやつだと叩くことも多い。だから、もしも本田が南アフリカで結果出してなかったら一生批判されていたかもしれない。それだけの重圧の中、キッチリ結果を出したから、今じゃ神扱いされている。サポーターの人たちも多少何かあっても文句言わないだろうね。

 でも本田はそういう扱いを受けても全然、有頂天になってない。全部先を見通して計算している。自分のためだけじゃなくて、日本を強くしたいって本気で考えているし、そういう気持ちを前面に出しているよね。ヤットさんや長谷部や永嗣(川島=リエージュ)のことも一目置いているし、お互いにいい関係も作っている。だからこそ、今の代表はうまくいってるんじゃないかな」と彼は分析する。

 現在のザックジャパンは本田ら北京世代がメンバーのほぼ半数を占める。長友佑都(インテル)、岡崎慎司(シュツットガルト)、内田篤人(シャルケ)ら南アワールドカップ組に加え、香川真司(マンチェスター・U)や、吉田麻也(VVVフェンロ)、細貝萌(レバークーゼン)らが台頭してきた。それだけ多くの選手がA代表まで上り詰めたのも、本田を中心に同世代が切磋琢磨しながら高いレベルを目指してきたからだと栗原は感じているという。

「北京世代はすごくお互いに刺激し合っているからみんな伸びている。大成功の世代だと思うよね。ユース代表、五輪代表、A代表とまとまって上がっていけば、一体感も生まれやすいし、『あいつができるんだったら俺も』という気持ちにもなる。本田たちの世代が次々と海外へ出ていって活躍しているのも、そういう側面があるよね。

 俺ら2003年ワールドユース(UAE)に行った世代は永嗣と今ちゃん(今野泰幸=G大阪)くらいで、アテネ五輪代表、A代表と上がってきた選手があんまりいない。そういう状況だと、どの代表に行っても『お客さん』みたいに感じちゃうし、中心選手になりづらい。そのあたりが北京世代との大きな違いなのかなと思う。

 それに、彼らは海外移籍がしやすくなった時代の選手で、タイミングの部分も大きい。俺らより上の世代は、欧州へ行きたいと思っても簡単に行ける環境じゃなかった。そういう運も実力のうちだろうけどね」

 海外移籍に関して言えば、本田は確かに北京世代の先駆者だ。2008年1月にいち早く名古屋からオランダのVVVフェンロへ赴き、08-09シーズンはキャプテンとして16ゴール13アシストをマーク。チームの1部復帰の原動力となるとともに、オランダ2部MVPを獲得し、一気に知名度を上げた。そして2010年1月の移籍市場でCSKAモスクワへステップアップし、UEFAチャンピオンズリーグで日本人初の8強進出(当時)を果たしている。

 そんな本田の大躍進に長友や岡崎らが触発されないはずがない。南アの後、彼らが続々と欧州へ渡ったのも「本田に追いつき追いこせ」という思いが少なからずあったからだろう。

【後編に続く】

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