フットボールチャンネル

日本代表 11年前

日本代表チームメートが語る本田という存在(後偏)

日本代表の中核を担う本田圭佑。同じチームでプレーするメンバーは、その存在感をどのように感じているのだろうか。日本代表選手たちの証言をもとに、その影響力について迫っていく。

text by 元川悦子 photo by Asuka Kudo/Football Channel

【前編はこちらから】 | 【フットボールサミット第8回】掲載

槙野智章「先輩の言葉は重く感じた」

 2011年の冬の移籍市場で1FCケルンに挑戦した槙野智章(浦和)もその1人である。

「僕が初めて代表に呼ばれた2009年6月の南アワールドカップ最終予選の合宿だったかな。圭佑君と同じテーブルでご飯を食べていた時に『お前も早く海外行けよ。若いうちに外の厳しい環境で揉まれた方がいい』とアドバイスされたのを強く覚えています。

日本代表チームメートが語る本田という存在(後編)
1歳年上の本田の姿勢を見習っていると言う槙野智章(浦和レッズ)【写真:工藤明日香(フットボールチャンネル)】

 僕自身、もともと海外志向はありましたけど、実際にそれを経験している先輩の言葉は重く感じたし、『絶対に行こう』と気持ちが固まった部分はありました。

 その意欲がさらに強まったのが、南アの後ですね。ユースの頃から一緒にやってきたウッチー(内田)とか香川が揃って欧州へ行き、代表で戻ってくるたびに自信をみなぎらせていたのが衝撃的だったんです。彼らの顔つきとか言動、パフォーマンスを見て、『こんなにも変われるなら自分も行きたい』ってすごく思いました。

 圭佑君にしても、南アの時に急成長しましたけど、それも自信がついたからでしょう。自信ひとつで怖いくらい人間は変われる。長友君にしてもわずか半年でチェゼーナからインテルへ行っていますし、彼らの短期間での激変を目の前で見ているから、自分もブラジルワールドカップまでの2013年まで、それからの1年間で大きく変われると信じている。そういう希望を与えてくれたのは、やっぱり大きいですよね。

 僕自身はケルンでほとんど試合に出られなくて、もう1回、原点に戻るつもりで1年で日本に戻りましたけど、ドイツでの時間が自分を見つめ直し、世界と自分の距離を測るいい機会になったのは間違いない。これをムダにしたくないし、先へのステップアップにつなげていけると思っています」

 槙野は、ケルンでもザックジャパンでも流動的なポジションに起用されてきた。182センチという身長は国際的に大型化が進むセンターバックとしては小柄な部類に入る。しかもCBでプレーする場合は、彼の最大の持ち味である攻撃力を出しにくくなる。サイドバックとしても、ケルンでは出場機会を得られなかった。

 日本代表では両方のポジションでチャンスを与えられているものの、6月の最終予選は出番なし。彼自身、どのポジションがベストなのかを模索する日々だったようだ。

 本田にしても、槙野と同じようなユーティリティゆえの悩みを抱えている。アジアカップMVP獲得後も「自分がボランチとかサイドとかトップとかいろいろやってきたのは目立つため。そして成り上がるため。だけどそんな器用な自分が嫌なわけですよ。世界の頂点目指して物凄いスピードで駆け上がりたいと思うなら、トップ下へのこだわりを貫くべき」と本人も言うように、1つのスペシャルな役割の重要性を自ら強調していた。

「圭佑君と同じで、自分もスペシャルなポジションの強みを出していかないといけない。世界に出て行って名前を売りたいならやっぱりサイドバックなんですよね。ドイツでも高さの部分で切り捨てられたし、自分の攻撃力を考えてもサイドバックの方が評価されるんじゃないかと思います」

 と槙野は自身と重なる本田の姿勢や考え方に共感を抱いているようだ。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top