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日本代表 11年前

日本代表チームメートが語る本田という存在(後偏)

text by 元川悦子 photo by Asuka Kudo/Football Channel

本田という名のエンジン

 当然のことだが、本田の多大なる影響力はピッチ外だけではない。ピッチ上でのパフォーマンスが光っているからこそ、周りは彼をリスペクトする。

「本田、岡崎、香川らで形成される攻撃陣はタテへのスピードが上がり、ゴールへの推進力も飛躍的に向上した」と外国人ジャーナリストも高く評価していたが、本田がトップ下でしっかりと体を張ってボールをキープし時間を稼いでくれるから、香川や岡崎、長友と内田の両サイドバックも思い切って前へ出られる。長友も最終予選の際、「圭佑が入ることによって、周りの選手がより多くの力を出せるっていう部分はある。

 僕と真司、圭佑が左に寄ってきた時は確実に相手を崩せる自信を持てるし、やっていてすごく楽しいっていう感覚がある」と自信を深めていた。

 そんな本田のことを、槙野は「攻撃のエンジン」と言い切る。

「圭佑君はまずボールが収まりますよね。ザック監督もよく『エンジン』という言葉に例えますけど、低速の中から圭佑君に入った瞬間にスピードアップする。後ろでゆっくりボランチを経由しながらボールを回していて、タテパスが入ったところで一気に加速する。

 そのスイッチ役を圭佑君が担っている。彼が持った瞬間から周りが動き出している。それが今のザックジャパンの攻撃陣のすごさなのかなと思いますね。

 圭佑君がいなかった時は香川もオカちゃん(岡崎)もなかなかフリーでボールをもらえなかった。圭佑君はホントにサッカーをよく知っているプレーをしていると思う。圭佑君と闘莉王(名古屋)さんというのは、1つの発言と1つのプレーで流れを大きく変えられる選手。そういう存在がいるのといないのでは、チームにとっては全然違いますね」

 本田がターゲットとして前線にいてくれるメリットは、最終ラインの一翼を担う栗原も実感していること。6月の最終予選・ヨルダン戦(埼玉)とオーストラリア戦(ブリスベン)の2試合を一緒に戦ったことで、彼の中で新たな発見があったという。

「本田はパワーもフィジカルの強さもあるから、多少きついボールでも抑えてくれる。オーストラリア戦なんかだと、あいつより体格のいい選手はいっぱいいたけど、決して当たり負けしなかった。そうやって堂々と戦って攻撃をリードしてくれるのは大きいよね。

 日本代表の攻撃も、以前の遅攻中心から速い攻めに変化している。遅攻がいいか、速い攻めがいいかっていうのは、チーム戦術や状況にもよるし、時代の流れもあるからどっちがいいとは一概に言えない。

 ただ、遅攻になった時、日本には絶対的な高さとか決定力のあるFWがいない。それで攻めきれないんだったら、今の日本代表みたいに近くのやつにポンポン当てて速い攻撃をした方がいいように感じる。その方が自分も楽だしね」と栗原は今のザックジャパンのスピーディーな攻撃を好意的に捉えている。

「日本代表の得点の形が増えた理由はシンプルで、海外でプレーしているやつが増えたこと。それに尽きる。海外に行けば、今の日本みたいなパスのつなぎはないけど、タテのスピードはホントにピカイチ。

 向こうで揉まれた選手が前線に増えて、ヤットさんやマコ(長谷部)と絡むことで、ポゼッションするところとカウンターで行くところの使い分けが意識できるようになったのかなと思いますね」

 と本田も最終予選の際、前向きにコメントしていた。その流れをリードしているのが彼であり、香川なのだ。

 欧州トップに近いレベルでプレーする本田らが真っ先に進化し続けることで、他の選手たちの意識レベルも上がり、ザックジャパンも一段と強くなる。そういう好循環が起きているのは実に頼もしい。南アワールドカップ前、本田が口にした「優勝を狙う」という言葉を本気にした人間はほとんどいなかっただろうが、今では選手たちの多くが真剣に頂点を目指している。

 それだけの影響力をもたらせる本田には、この先も「時代の先駆者」として日本サッカーを力強く牽引してほしい。

【了】

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