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アジア 11年前

中国サッカーに未来はあるか?(その3)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

消されたジャン・ティガナ

 国際都市・上海には、中国超級(スーパーリーグ)に所属するふたつのクラブがある、すなわち上海申花(しゃんはいしんふぁ)、そして上海申きんである。このうち、世界的な知名度を得ているのが、元フランス代表のニコラ・アネルカを週給2500万円で獲得した上海申花であろう。最近では、チェルシー所属のディディエ・ドログバの獲得が、かなりの信憑性をもって噂されていることでも有名だ(※注:2012年6月19日に移籍が正式決定)。

 不動産オーナーが大半を占める中国超級だが、申花のオーナーである朱駿(しゅしゅん)は、第九城市というオンラインゲーム会社の代表。それゆえであろうか。このところの申花の強化策は、何やらヴァーチャルなゲームの中の出来事のように突拍子ない。これで成績が上向けば何ら問題ないのだが、今季の申花はスタートダッシュに失敗。前節では、戦力的に劣ると考えられていた、岡田武史監督率いる杭州緑城に1-1のドローに持ち込まれ、第5節終了時で16チーム中10位という不本意な成績に留まっている。

 この責任を一身に負わされたのが、今季から申花の指揮を執るジャン・ティガナ。周知の通り、現役時代はミシェル・プラティニやアラン・ジレスらと共にフランス史上最強の中盤を構成。指導者に転じてからは、ASモナコ、フルアム、ベシクタシュでそれぞれタイトルを獲得している。今回の申花監督就任に際しても、ティガナは300万ユーロ(約3億円)という、中国での指導者としては当時の最高年俸で迎えられた。言わば三顧の礼をもって迎えられたティガナであったが、ここに来て、その地位が危うくなっていた。

 申花がホームに天津泰達を迎える前日の2012年4月12日、「アネルカが申花のコーチを兼任」というニュースが地元紙に報じられた。さらに試合当日の報道によれば、ティガナはすでに荷物をまとめて宿舎を出払っており、「今後は(コーチ就任が発表された)アネルカが監督を引き継ぐのではないか」という論調が主流となっていた。では今日の試合は、誰が指揮を執るのだろう。

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