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アジア 11年前

中国サッカーに未来はあるか?(その3)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

「いるはず」の監督が姿を現さない…

 試合前の選手紹介。電光掲示板に「監督、ジャン・ティガナ」と紹介されると、申花のサポーターからブーイングが沸き起こる。だが、この試合でティガナはベンチに姿を現すことはなかった。試合も申花にとっていいところなく、0-1で敗れてしまう。注目のアネルカは、ピッチ上で盛んに指示は出していたものの、およそコーチ兼任としてのタスクを全うしているようには見えなかった。

 何とも不可解な試合内容。だが、それ以上に不可解だったのが、試合後の会見である。会見場に現れたのはティガナでもアネルカでもなく、名も知らぬ中国人スタッフであった(知人の記者に彼の役職を尋ねたら「副団長」という答えが返ってきた。日本のクラブにはないポジションらしい)。当然、メディアから手厳しい質問が飛ぶ。

──なぜこの場に監督が来ないのか?

「ティガナ監督はフロントの要請に従い、今までの試合の分析をまとめているところだ。それをもって、今後のチーム改善に役立てていくつもりだ」

──中国サッカー協会が定めるルールでは、試合後の会見には監督が出席すべきと明記されているが?

「新しいコーチが、まだ入国できない状況なので、私が代わって出席した」

 奇妙な会見はこうして終了する。それにしても、メンバー表にサイン入りで名前が書かれてあるティガナは、いったいどこへ行ってしまったのか。すると、今回の取材に同行してもらっている、日本語に堪能な応虹霞記者が「これはティガナ監督のサインではないと思います。だってここに『交代』と書いてありますよ」と鋭い指摘をしてくれた。念のため、前節の緑城戦のスターティングリストと見比べてみると、なるほど確かに、ティガナ本人のものとはまるで異なるサインだ。

 リスト上では「いるはず」のティガナがベンチに座らず、しかもサインまでもが何者かによって代筆されている。いったい中国超級はどうなっているのだろう。

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