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日本代表 11年前

「最高の選手たちと一緒にやるのは楽しみ」。成長を続ける柿谷曜一朗が語る代表への思い

text by 小田尚史 photo by Asuka Kudo / Football Channel

重圧に向き合う姿勢

 覚悟を持って挑んだ東アジア杯。柿谷は2試合で3得点1アシストという目に見える結果を残し、見る者に鮮烈な印象を残した。

 その内訳を見ると、中国戦の1点目は槙野のクロスを呼び込んでのヘッド、1アシストは、自身のドリブル突破から、スペースへ走り込んだ工藤へのラストパス、韓国戦の1点目は青山のフィードに反応し、2点目は、原口がドリブルしたのち、シュートするであろうことを予測したポジショニングからのゴールだった。

 いずれもチームメートのプレーをよく見て、その良さに合わせた形。独り善がりの姿勢では決して生まれないゴールの数々だった。テレビ越しに見た、優勝した瞬間の柿谷の表情は、心底嬉しそうだった。

 わずか4年前、自身が点を取って勝利した試合後に、「今日は自分のゴールだけが嬉しかった」と話した男が、チームで勝ち取った優勝を心から喜んでいた。改めて、心身共に成長した姿を示した大会となった。

 帰国後は、眠たそうな目をこすりながらも、“優勝”の喜びを冗談めかして話した。

「優勝っていいもんだな、と思いましたね。でも、やっぱり広島や浦和の選手たちは慣れていました。喜び方を知っていました(笑)それに比べて僕や(山口)螢、タカ(扇原)はボッーっとしていた(笑)でも、この喜びをセレッソでも味わいたい」

 1日で軸足はクラブに戻った。この日から、東アジア杯優勝の立役者として、大会前以上の視線が彼に注がれることになるが、注目を浴びる恍惚も、期待に応えられなかった際の孤独も、すでに一度経験済み。

「昔はメンタル的に弱かった。今はそういった周囲からのプレッシャーもコントロール出来るはず。これからも全てが上手くいくことはあり得ない。上手くいかなかった時にどれだけ冷静にいられるかが大事になる」

 柿谷は自らに言い聞かせるように話した。賞賛と批判。それらを一身に浴びることが許されるのは、ごく一握りの選手。重圧と感じるのではなく、成長への糧とすべく、全てと向き合う覚悟を示したのだ。

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