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Jリーグ 11年前

多摩川クラシコで躍動した中村憲剛。FC東京の“川崎対策”はなぜかわされたのか?

text by いしかわ ごう photo by Asuka Kudo / Football Channel

マンマークを逆に利用した中村憲剛

 ただ経験豊富な中村も、対応策の引き出しは多彩だ。例えば、トップ下の自分がタッチライン際まで流れてもマークが付いて来るかどうか。あるいはボランチの位置まで下がっても自分に付いてくるのかどうか、相手がどの範囲まで自分のマークに付いて来るのか相手の判断を巧みにテストしてしまうのである。

 マークが付いてこないのであればそのエリアの間で自由にプレーを行い、深追いしてくるのであれば、それで空いたエリアを味方に使わせてチャンスを作ればいいという対処法を持っているのである。

 この試合の先制点はそのマーキングを利用して生まれている。33分、ゴールキックを受けた左SBの登里享平のボールを、トップ下の中村憲剛が中盤の左サイドに下りてきて受けにいったが、このときの米本は中村に対してかなり深い位置までアプローチに付いていっている。だが中村はサイドにいるレナトとの近い距離でのワンツーでプレッシャーにきた米本を翻弄するように外している。

 ボランチの一角がこれだけ相手に食いつけば、守るべきバイタルエリアがぽっかりと空く。大久保がそのエリアでボールを受けて素早く起点を作ると、今度は右サイドのアラン ピニェイロとのワンツーで抜け出し、絶妙なコントロールでゴールネットを揺らしてみせた。相手のタイトなマンマークをまんまと逆手に取った駆け引きに、中村もしてやったりの様子だった。

「今日は米本選手が自分のところにかなりきていた。俺についてくるということは嘉人のところが空くし、それで相手を引き連れることもできる。それにあれだけワンツーで出して、動いてというのを繰り返せば相手はついて来れない。ああいうのをもっとやりたいね」

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