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セリエA 11年前

日本戦で引退した元インテル・スタンコビッチ。「これ以上ない敬意の印」と賞賛された長友との“お辞儀”

text by 神尾光臣 photo by Asuka Kudo / Football Channel

全力でチームを支える姿をファンも支持

 スタンコビッチは名門ツルヴェナ・ズヴェズダ(レッドスター・ベオグラード)の下部組織で見いだされ、19歳にしてキャプテンを経験。当時の評判はイタリア国内にも伝わり、大型補強ブームの中で「メルカートの目玉」として注目されていた若手だった。

 そして1998年、ラツィオに移籍。確かな技術と高い戦術眼を活かして中盤のあらゆるポジションをこなし、UEFAカップウイナーズ・カップ制覇やスクデット獲得に貢献している。

 2004年1月にインテルに移籍した後も、すぐに主力として活躍する。特にロベルト・マンチーニ監督下では、戦術上絶対に欠かすことの出来ない駒として機能した。トップ下に起用されればシンプルにボールを繋いでゴール前へと飛び出し、深めのポジションで使われれば正確なミドルパスでビルドアップを図る。

 時折華麗なミドルシュートでネットを揺らす一方で、守備にもまた全力を尽くした。アンカーに起用されれば絶妙なポジショニングで相手の攻撃を切り、90分間体を張り続ける。2006年11月、首位対決となったアウェーのパレルモ戦に勝利した直後、試合終了のホイッスルと同時にピッチで膝をついた姿が印象的だった。

 2010年の三冠獲得以降は故障がちになり、キャリアも下降線を辿る。折から世代交代の渦中、残り1年となった契約を2013年6月に解消し、また現役からも退いた。しかしピッチであまり貢献出来なかった晩年も、チーム内でリーダーシップを発揮し続けた彼の姿に、ファンからの支持は変わらなかった。

 卓越した技術をひけらかすようなことはせず、チームプレーのために用いて、毎試合でエネルギーを最後の一滴まで絞り出す。「インテルの選手の強さはメンタルにある」と長友は語っていたが、スタンコビッチは紛れもなくそれを体現していた一人だったのだ。

【了】

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