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セリエA 10年前

カルチョの国からの最先端戦術理論(前編)「セットプレーとはサッカーとは別な競技である」

text by 宮崎隆司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

セットプレーを重要視する監督は少ないが…

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2012年のユーロではセットプレーからのゴールは16.7%を占めた【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 話をフィレンツェに戻せば、昨季から伊国内で最も“面白い”サッカーを見せていると評されるのがフィオレンティーナであり、それを可能にしているのが監督モンテッラである。配下にはヴィオだけでなく他にも“他クラブにはない類い”のコーチが何人か存在している。

 たとえば、フットサルの現イタリア代表助監督であるリッカルド・マンノを攻撃と戦術分析専門のコーチとして招聘するなど。新たな何かを取り入れて行こうとする姿勢は極めて貪欲だ。

 そしてヴィオは、Macの画面で幾つものフォーメーションを図解と映像で見せながらこう続ける。

『セットプレーというのは、言ってみればサッカーという競技の中に存在する“別のスポーツ”なんだ』と。

 たしかに、言われてみればその通りである。通常はボールが動いているのがサッカーなのだから、動いていない状態を別物と捉えても何ら不思議ではない。

 ボールが止まった瞬間、『ルールはまったく違う物になる』。さらにヴィオはこうも語る。

『ところが、およそすべての監督たちがなかなかこの考え方に与しない。その重要性は理解しながらも、かといって“ことさら重きを置く”というレベルにはないと言うべきだろう。

 もちろん一通りのパターンはトレーニングされているが、それ以上ではない。その意味で、モンテッラのサッカー観は他と異なる。彼はひとつの重要なデータに特別の注意を払っては非常に重きを置いている』

 ヴィオの言う、ひとつの重要なデータ。それは他でもない、今日のサッカーでセットプレーからのゴールが全体のそれに占める割合である。その率は概ね15~20%(約35~40%に達するという説もある)。

 事実、昨年のユーロ(2012欧州選手権)のグループリーグ全24試合でのゴール総数は60。内、セットプレーからの得点は10。16.7%である。したがって、ヴィオが説かんとするのは当然、『いかにしてその数字を高めていくか』となる。

【後編に続く】

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