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そこにいたファンはどこへ?話題を呼んだモウリーニョ退場劇。“家族席”観戦の知られざる事情

text by 山中忍

ベンチ裏を「家族席」に変えたのは…

 いずれにしても、モウリーニョと一緒に観戦したファンにとっては、忘れ難い一戦だ。オスカルがチーム3点目を決めた78分には、ピッチ上の光景よりも、咄嗟に立ち上がり、両手を突き上げるスタンドの監督を眺めて歓喜するファンがどれだけ多かったことか。スタジアムには、「ジョゼ・モウリーニョは意のままに席を選ぶ」というユーモアのあるチャントもこだました。

 ファンは、モウリーニョに感謝しなくてはならない。ベンチから追い出された行為ではなく、ベンチ裏の席をチェルシーの「家族席」に変えてくれたことだ。前後半の終了間際に可動式のトンネルがせり出すと、視界の一部が遮られるセクションを含む東スタンド1階席は、長らくアウェイチームのサポーターにあてがわれていた。

 だが、前回の就任1年目を終えた2005年、モウリーニョはチームが「仲間」の声援を背に受けて闘えるようにとの配慮から、ベンチ背後の「ファミリー・センター」化を希望したのだった。

 カーディフ戦での勝利を伝える翌朝の国内各紙には、チェルシーの「家族席」で喜ぶモウリーニョの様々な写真。チェルシーが守備の凡ミスで先制されたことや、判定に恵まれた同点ゴールで流れが変わったことは、指揮官のスタンド観戦の影に隠れた恰好だ。つくづく、「我々の一員」様様である。

【了】

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