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日本代表 10年前

“2番手”以上の存在感を示したGK西川周作。日本に流れ呼び込んだ高いビルドアップ能力に迫る

text by 河治良幸 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

切れなかった集中力

「自分は所属チームでもそういうサッカーをやっていて楽しいので、GKとして守るだけじゃなくて攻撃参加というのを出そうと思っていた。オランダも足下が悪い中でかなりつないでいましたけど、ミスをしてもまたトライする姿勢は素晴らしかった」

 そうしたオランダとの試合で、西川のビルドアップは非常に研ぎ澄まされていた。キックが正確なだけでなく、どこに蹴るべきか、ディフェンスにつなげるべきかという状況判断は海外でもハイレベルにあるだろう。実際、この試合ではアヤックスの若いGKシレッセンよりはるかに目立っていた。

 もちろんビルドアップだけではない。2失点はしたが、「下を向くこと無くやっていましたし、本大会でも先に点を取られるようなことはありうるので、その後が大切」と最後まで守備の集中を切らせることはなかった。

 オランダやスペインの様に、前からプレッシャーをかけてくる強豪を相手に、ディフェンスラインのつなぎだけで主導権を握ることは難しい。守備の要でもあるGKは基本的にレギュラーを固定する。彼らが“守護神”と言われるのもそうした背景があるからだが、チーム作りにおいて絶対的な基準ではない。

 ザッケローニ監督の中で守護神・川島に対する信頼は揺らいでないはずだが、強豪とのテストマッチにおいて西川が日本の攻撃にリズムと深みをもたらす良質なビルドアップによって“第2GK”以上の価値を示したことは確かだ。

【了】

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