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ドルトムントを圧倒した“スーパー・バイエルン”。ブーイングを静寂に変えた“裏切り者”ゲッツェ

text by 本田千尋 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

圧倒的だった王者。中でも圧巻だったのは…

 ゲームが終わると、バイエルンのゴール裏からは「スーパー・バイエルン」の声がこだました。バイエルンはドルトムントを圧倒した。もはや奇跡のチカラを借りずしてバイエルンを止められるチームはドイツ国内には存在しないだろう。

 しかし何にも増して、このゲームで圧倒的だったのは、マリオ・ゲッツェという1人の選手がわずか47分の間に、観衆の奥底から喜怒哀楽の感情の全てを引き出したという事実だ。これを圧倒的と言わずに何と言えば良いだろう。

 人はサッカーに何を求めるのか。ピッチの光景を鏡にして、いつもとは違う自分の姿を見たがっているところもあるのではないだろうか。そこでは日常では許されない何かが許される。メガネを掛けた女の子が、我をかなぐり捨てて暴言を吐いても、誰も咎めはしない。そしてそんな姿を観衆から引き出すのもまた、プロ、なのである。

 その意味でも、この日マリオ・ゲッツェは紛うことなきプロ・フットボーラーだった。

 ピッチに立つだけで、観る者からあらゆる感情を引き出すことが出来る――それもまた、限られたプロ・サッカー選手に与えられた、天賦の才なのかもしれない。

【了】

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