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リアルな数字『3.5倍』にまでなった解任オッズ。モイーズ監督はなぜマンUを“常勝”気流に乗せられないのか?

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

変わっていないマンチェスター・ユナイテッド。唯一変化があったのは…

 そのわずか3日後、後半16分にキャバイエが奪った虎の子の1点を守って、今度は41年ぶりにオールド・トラフォードでリーグ戦勝利を記録したニューカッスルのサポーター達が、「明日の朝には解任だ!」と大声で叫んでいた。マンチェスター・ユナイテッドは2002年以来となる、ホーム2連敗を喫していた。

 無論、イングランド内でもサッカー狂で知られるニューカッスルの縦縞ユニフォームを来た連中は、いつまでもアウェイ席で飛び跳ね続けており、その空間には濃密な喜びが漂っていた。

 しかしそれ以外の全てのものが希薄で散漫だった。昨季までは試合終了間際に同点、逆転ゴールが次々と生まれ、「シアター・オブ・ドリーム」(夢劇場)と呼ばれたオールド・トラフォードから、何かが消えた。まるで魔法が解けたような虚脱感。そんな無力感がスタジアムを埋めていた。

 試合直後の会見で、モイーズは極めて冷静に、記者の質問に対応していた。ところが、会見の後半、ひとつの質問が飛ぶと、血相を変えた。

 その質問は、「監督に就任してから、少し急速に物事を変えすぎたという思いはないか?」というものだった。

 するとモイーズは、思わずという感じで「changed?」と質問にあったキーワードを、怒気を含んだ声で自ら繰り返した。そして、「何も変えてないじゃないか。選手は昨季と一緒、フォーメーションも一緒だ」と、苛立たしさを隠さず答えた。

 しかしその場にいた人間は、全員が同じ言葉を心の中でつぶやいたに違いない。「監督が変わったじゃないか」と。

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