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リアルな数字『3.5倍』にまでなった解任オッズ。モイーズ監督はなぜマンUを“常勝”気流に乗せられないのか?

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

前監督の返り咲きオッズは現実的な数字の“6.5倍”

 しかし優勝できなかった6年間で、40代後半だった精力的な闘将は、酒やギャンブルに溺れたスター選手を一掃すると、チームに規律をもたらし、自分が絶対的な影響力を持つ若手をどんどん起用した。

 ベッカムは、子供時代から愛したマンチェスター・ユナイテッドを追われるように去ったが、その後もことあるごとにファーガソン監督を「父親的な存在」と呼んで慕った。それは黄金時代にチームを支えた大半の選手が抱いた思いだっただろう。

 彼らは闘将をサッカー上の父親として慕い、恐れたのだ。

 ファーガソン監督は、1992年にFA杯を優勝し、解任すれすれの状態を脱すると、翌93年、「プレミア」として生まれ変わった英1部リーグを制し、その後20年間に渡る黄金時代を作った。

 一方モイーズの場合は、ファーガソン監督とは真逆の状態でマンチェスター・ユナイテッドの監督を引き継いだ。同郷であるグラスゴーの大先輩監督は、全てを勝ち取っていた。クラブ・サッカー史上、監督として、まさしく史上最高の成績と栄光に包まれて引退。そんな大監督に忠誠を誓ったサポーター達は、後任監督も勝って当然という意識でいる。

 そんな環境で、表向きには昨季優勝した戦力を渡されたが、前監督が“強い父親”として選手に絶対服従を強いた人間関係と、クラブの意思決定における絶対的な権限までは引き継いでいない。

 ホーム2連敗でモイーズの解任オッズはがくんと下がった。年内の解任は5倍。今季一杯では3.5倍。そしてファーガソン監督の返り咲きオッズは6.5倍だという。これはかなり現実味を帯びた倍率だ。

 ということは、少なくとも英ブックメーカーは、モイーズには“6年間の無冠は許されていない”と考えていることが分かる。

 それどころか、アストンビラ(15日A)、ウエストハム(21日H)、ハル(26日A)、ノリッジ(28日A)と続く下位チームとの対戦でひどい取りこぼしがあれば、あっと驚く更迭もあると見ている。

 その最悪の事態を避けるには、まずはモイーズがエヴァートン時代の気難しい戦略家に戻り、現在のボスが誰なのか、選手に思い知らせる必要があるのではないだろうか。

【了】

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