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日本代表 10年前

今だから分かる、アジアカップ時の言葉に隠された本田圭佑の実現力

text by 元川悦子 photo by Kenzaburo Matsuoka

「自分が成り上がるためにあえていろんなことをやってただけ」

 前述のコメントから分かるように本田はまったく満足していない。さらにこう言葉を続けた。

「CSKAでボランチをやってプレーに幅が出た? いや。どれだけの人がそう思ってるか分からないですけど、それはみなさんが俺を今まで見てなかっただけの話で、俺はディフェンスも昔からできてたし、昔からパスも出せてた。

 目立つために、自分が成り上がるためにあえていろんなことをやってただけの話。それをやらないと成長しないのはわかってるけど、それを消しても今回は優勝したかったから、そこが不本意ですね。自分を貫けなかったから。

 ようは器用な自分が嫌なわけですよ。正直、切り替えられる自分が器用だってことは知ってるわけですよ。だけど、そのままじゃ、成長するスピードが日本人のままなんですよ。それじゃダメだと感じてるからこそ、悔しかったかなって思います。優勝できたことだけがね、ホントに救いだったかなというのはありますね」

 これを話した時の彼は燃えるような目をしていた。アジアカップ優勝とMVP獲得は世界トップを目指す一歩にすぎなかったのだ。そしてその言葉通り、本田は成長を続け、ACミランへの移籍を果たした。

 ミランは言わずもがなビッグクラブだ。「世界中で認められたい」という彼の願望を叶えられる場所と言える。あとは本田が自分を貫くことができるかどうかだ。

 本田の新たな戦いが始まる。

【了】

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