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内田篤人 10年前

内田の知性―磨かれ続けるフットボール・インテリジェンス―

内田篤人のサッカー選手としての一番の魅力は“知性”ではないだろうか。1対1を重視するドイツで通用するために、日本代表をチームとして機能させるために。進化を続けるサイドバックのフットボール・インテリジェンスに迫る。

text by 清水英斗 photo by Shinichiro Kaneko/Kaz Photography , Kenzo Koba , Kenzaburo Matsuoka

【フットボールサミット第16回】掲載

オランダ戦のゴールに見えた内田の“変化”

「鹿島時代のアツトに戻った!」

内田の知性
オランダ戦は内田篤人のストロングポイントを感じさせるものだった【写真:Shinichiro Kaneko/Kaz Photography】

 2013年11月16日に行われたオランダ代表との親善試合で、そのような感想をもった人もいるのではないだろうか。いつもどおり、右サイドバックに入った内田篤人。ここで彼は、近年の傾向とは少し違うプレーで結果を残した。

 60分、右サイドを駆け上がって遠藤保仁からのサイドチェンジを受けると、遅れて戻ってきたオランダの左ウイング、レンスと対峙する。ここで内田は岡崎慎司に縦パスを入れ、中央へどんどんカットイン。本田圭佑を経由したボールをペナルティーエリア手前で再び受け取ると、1トップ、大迫勇也の動き出しに合わせて縦パス。そこから大迫が落としたボールを本田がワンタッチで押し込んだ。

 1点を追いかけていたザックジャパンは、このゴールで2-2と同点に追いつく。司令塔ばりのチャンスメークでゴールを演出した内田は、本田の大きな背中に全力で飛びつき、喜びを露わにした。

『ポジションのバランスを取り、攻め上がりを自重する』。ここ数年の内田のプレー傾向が刷り込まれている人には、今回のダイナミックなカットインは衝撃を与えたかもしれない。しかし一方、鹿島アントラーズ時代から彼のファンだった人にとっては、このプレーは、内田の『過去』を回想するものだったのではないだろうか。

 とはいえ、「鹿島時代に戻った」という表現はあまり正しくないのだろう。もともと右サイドハーフや攻撃的MFを務めていた内田が、右サイドバックに転向したのは高校3年生のとき。つまり卒業後、鹿島入りして1年目でレギュラーを取ったとき、内田はまだ『サイドバック2年生』だった。当時の内田はみずからのサイドバックとしてのプレーぶりについて、「先輩たちがカバーしてくれるので、僕は自由にやっているだけです」と語っていた。

 50メートル5秒台の俊足を武器に、勢いよく仕掛けられたのも、周囲が彼をサポートしてくれたから。鹿島時代の内田が見せた攻撃と、今回のオランダ戦で内田が見せた攻撃。見ためのアウトプットは似たようなものにも思えるが、両者のプレーはまるで本質が違う。

 フットボール・インテリジェンス――。オランダ戦のゴールは、内田のもっとも大きなストロングポイントを感じさせるものだった。

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